なぜ「東海道」四谷怪談なのか?

6月に上映予定の「東海道四谷怪談」についてですが、FBFの幡さんから「四ツ谷なのに何で『東海道』というのでしょうか?」というごもっともな質問をいただきました。以下、最も説得力のある説を紹介しておきます。

なお、「忠臣蔵」との関連性を全面に押し出した映画作品は、これは好き嫌いがはっきり分かれますが「忠臣蔵外伝 四谷怪談」(94年)です。高岡早紀のヌードシーンばかりが話題になったような(?)気がしないこともないのですが、これはこれで私にはとても面白かった作品でした。

本来武家の娘のはずのお岩が最初から娼婦だったり(しかも高岡早紀のセリフほとんど全部現代語)、伊右衛門の復讐するより赤穂浪士の討ち入りを助けるために妖力を使ったり、もうストーリーは相当いじられまくってます。佐藤浩市をはじめ、渡辺えりこを筆頭に役者もみんな「危ない人間」ばかりで、忠臣蔵とか怪談とかいう以前に、出てくる人間が幽霊よりよっぽど怖い性格ばかり。

しかし、音楽の使い方、特にクラシックと琵琶を重ねた使い方は見事でした。また、討ち入りに命を懸けていたはずの同志が、挫折したり、生活の苦境の中心中したりするさまなどは中々心に迫りました。

心中直前、大石内蔵助にお金を貸してくれと尋ねてきた同志に対し、内蔵助が「遊びの金ならば貸してやれるが、暮らしのためならば貸せん、暮らしのための借金は心を貧しくするからな」と断り、その同志は「そうですね、最初から遊びの金と言えばよかったのですね」と静かに笑って立ち去り、遊女と心中した、というエピソードが内蔵助自身によって語られるシーンがありました。あれはなぜか印象に強く残っています。

まあ「カルト名作」というべきものかもしれませんが、興味のある方はレンタルしてみてください。

では、以下は「東海道」の由来についての解説を引用します。

「四谷怪談」の東と西

~南北を同時代化の発想で読む(2):「東海道四谷怪談」

1)「四谷怪談」の東海道

ある時にフッと思ったのですが、どうして「四谷怪談」は「東海道四谷怪談」というのでしょうか。ご存知の通り、「四谷怪談」は「忠臣蔵の世界」に仕組まれており、それ自体が忠臣蔵外伝といった形に作られています。それならば、翌年(文政9年)に大坂で上演された外題「いろは仮名四谷怪談」の方がピッタリする感じです。どうして「東海道」なのでしょうか。

一説によれば、今の神奈川県藤沢市あたりに四谷という地名があったそうで、南北は「四谷怪談」を忠臣蔵の世界・つまり江戸を鎌倉に置き換えるために、藤沢が「四谷」だという便法で「東海道」とつけたのだろうとも言われています。しかし、南北がはっきり「雑司ヶ谷四谷町」と書いていることですし、隠亡堀とか蛇山など実際にある地名も含めて、南北は「四谷」を江戸の地名であるとして書いているとしか思えません。

南北がこの芝居の外題を「東海道四谷怪談」としたのは、その名の通り江戸と上方を結ぶ大動脈である街道「東海道」を指しているのだろうと思います。上方は赤穂(つまり、ここでは表狂言である「仮名手本忠臣蔵」の世界)、そして江戸(つまりここでは裏狂言である「四谷怪談」の世界)とをつなぐ線こそが、この芝居を読む鍵であろうと思います。

「東海道四谷怪談」は文政8年(1825)7月江戸中村座での初演。鶴屋南北71歳の作品です。初演時にはこの作品は「仮名手本忠臣蔵」と交互に上演し、二日掛かりで完了する興行形式を取りました。

第1日:「忠臣蔵」大序から六段目までを上演し、次に二番目狂言として「四谷怪談」序幕から三幕目の「隠亡堀」までを上演。

第2日:まず「隠亡堀」を上演し、「忠臣蔵」七段目から十段目まで、次に「四谷怪談」四幕目から大詰めまで、最後に「忠臣蔵」の十一段目(討ち入り)を上演。

「隠亡堀」が重複して演じられているのが興味あるところです。また「四谷怪談」大詰めで伊右衛門が討たれる場面で雪が降っており・与茂七が火事装束で現れるのは、この場面が「忠臣蔵」のまさに討ち入り 前夜であるということ、つまり与茂七は伊右衛門を討った後に討ち入り現場(高師直館)へ駆けつけるということを示しています。

こうした上演形式をとったのは初演時だけのことで、再演以降は「四谷怪談」は単独で上演されてきました。怪談芝居としての「四谷怪談」の要素の方が主体になってしまって、仕掛け物・ケレン物としての工夫がされてきました。だから「四谷怪談」が「忠臣蔵」の世界であることは予備知識として持ってはいても、討ち入り物(「忠臣蔵」の世界)としての「四谷怪談」の意識はいまでは薄れてしまっていると思います。

http://kabukisk.com/sakuhin46.htm?fbclid=IwAR2hd7RbG8Bqm6qPvbas_vBY9bQx6Lxtf471Qq8ZTCfh1s21mlelf5Xo8NM
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