「生ポのポエムさん」という漫画について 最後まで漫画家であろうとした意志に敬意を表したい

「生ポのポエムさん」という、わずか20ページほどの漫画がある。エンペラーズコミックという所から、KINDLE、いわゆる電子書籍で出版されている。

著者は吠夢、いわゆる実録マンガ、体験マンガなどを書いてきたが、本来描きたかったのはホラー漫画だった。しかし、あまり成功はできず、50を過ぎて仕事もだんだん切られてゆき、かつ、糖尿病を患って目も次第に見えなくなってきた。追い詰められた著者は、編集者のアドバイスもあって生活保護を申請し受給することになる。この実体験を漫画にして新たな境地を開こうとした…というより、もうその実体験以外何も描けない状態にあり、それでも、漫画を描きつづけようとした。編集者は新味になって相談にのり、パソコンの苦手な著者を助けてネットで漫画を発表していく道を教えてくれた。

しかし、編集者に励まされて制作に向かった著者だったが、連絡が途絶え、孤独死していたのが発見される。編集者は遺品の中から、最後に描いた漫画と、その後のいくつかのアイデアが書かれたノートを見つけ出し、遺族にも許可を取ったうえで、ネット出版することになった。

私も正直最初は、単に物珍しさから、好奇心から読んでみたに過ぎない。また、未完、というよりイントロが終わったという程度の20ページまでしか描かれておらず、「作品」として評価したら書いた本人も不本意かもしれない。しかし、これは「生活保護を受けるしかなくなった漫画家の物語」ではなく「追い詰められ、希望を持てなくなっても、それでもマンガ家であり続けようとした人間の物語」として、ある感動を持って読むことができた。

役所で保護を申請する時の著者の言葉「漫画家をやめたつもりはないけど、仕事が来なくなって‥」というのは泣き言ではない。これは作者なりの、自分に描く場さえあれば描き続けるという意志の表れ。自分の才能の限界は自分でもわかっている。今の生活状況は本質的には浪費をやめられない自分自身の問題であることもわかっている。でも、だからこそ、漫画を描きつづけなければ自分は自分でなくなってしまうのだ。

ネットの記事によれば、いつもアポをきちんと守っていた著者が、急に編集者との打ち合わせをキャンセル、泥酔でもしているかのように電話口でひたすら謝った後は連絡が途絶え、そのまま孤独死していたという。死者のことを勝手に想像するのは非礼かもしれないけど、もしかしたらマンガにも書かれている糖尿病が進行し、ついに絵が描けなくなってきたんじゃないだろうか。

とにかく、著者は力が尽きるまで漫画家であろうとした。その姿は誰にも笑うことなどできない。「あがきもしなくなったらその先はないんだからな」ノートに書きつけられていたこの言葉は、どんな苦悩の中にある人間にも当てはまる一言だ

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