稲川和夫さん、高世仁さん、こういう人たちが正当に評価されないのが今の日本ジャーナリズムの現状

これは御本人からしてみたら書いてほしくないことかもしれないけど、やはり、多少は拉致問題その他に関わってきた人間としては記しておきます。

「映像教育研究会」を運営してこられた稲川和夫さんは、この拉致問題が家族会が結成され、署名運動が始まったころからずっと運動の記録を撮影してきました。おそらく、国民大集会はほぼすべてを録画しておられると思いますし、さらに今見直しても貴重な映像がたくさん撮影されているはずです。

安明進、兵本達吉、亡くなられた佐藤勝巳各氏、そして国民大集会で初期はいつも証言していた韓国人拉致被害者の姿など、いろいろな意味で、むしろ今再分析すべき発言も多く記録されているでしょう。脱北者が隠し撮りをしたフィルムを編集した「北朝鮮 素顔の人々」も、稲川さんがいなければ世に出ることはなかった作品です。

稲川さんのもとには、他にも私が知らないだけで、貴重な映像記録は山のようにあるでしょうし、かってアメリカ人監督が「拉致」というドキュメント映画を作った際も、映像提供ではかなり協力しています。さらには、南ベトナムの旧軍人が、難民からなる義勇兵を編成して、北統一後のベトナムに反共ゲリラを試みた映像の編集など、知られざる現代史の一面を記録したものもありました。

しかし、残念なことながら、稲川さんは自分の事務所である「映像教育研究会」を事実上閉じることになりました。正直、大きいのは経済的理由です。確かに、一私企業、個人経営の研究会に公的機関が応援するわけにはいかないでしょう。経営は自己責任だと言われればそれまでです。しかし、稲川さんの記録は、少なくとも日本にとって貴重な歴史の証言であり、その初期映像は、マスコミがほとんど無視し、国民にも知られていなかった時代の運動の記録として、私は公的機関が保存し管理すべきものと思っています。

さらに言えば、拉致対はあれだけの予算があるのですから、稲川さんのような方の活動に、せめて実費くらいは支援してもバチは当たらないのではないでしょうか。稲川さん自身はそれを拒否されるかもしれませんが、どうも御金の使い方を間違っているように思えます。

先日、これも尊敬するジャーナリストの一人、高世仁氏の放送会社、ジン・ネットも事実上倒産しました。高世氏はリベラルな思想の持ち主でしたが、この北朝鮮問題、よど号問題(特に偽札問題など)に真摯に取り組んできた方の一人です。テレビの現場でも、感情論や怪しげな情報、また左右いずれであれ偏った意見を廃し、重要な問題ほど冷静に伝えるべき努力してきた方でした。北朝鮮を脱出してきた日本人妻を、中国まで行って、日本政府と交渉して救出したこともあります

こういう、現場で動く、かつきちんと資料を撮影し集めてくる人がいなければ、テレビのニュース番組など作れません。そのようなある種の「下請け」に充分な人件費を与えず、自称「専門家」の言葉で番組をつくるのは報道番組とは言えないはずです。

きちんとした仕事をしている人が相応の評価を受けること、どんな仕事もそうあるべきなのですが、報道の現場においてこそ、その原則は貫かれるべきでしょう。その上で、左右の主張があるのはかまいませんが、基礎となる現場取材がおろそかのまま、政治的主張が全面に出ては、それは報道番組とは言えません
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