演劇「めぐみへの誓い」のすばらしさ

演劇「めぐみへの誓い」について、本当は私のような運動に関わっている人間が論じないほうがいいと思ってこれまであまり書かないできたんですけど、正直、私の知る範囲では、保守系メディアにもきちんとした評価が書かれていない気がする。そのうちちゃんとした文章を書くつもりですが、一番私がこの演劇で感動したところをちょっとだけ触れておきます

この演劇が、もし拉致問題だけ、「気の毒な家族の悲劇」というだけのものだったら、私はあまり人に推薦したり語ったりはしませんでした。そういう作品はすでにマンガでもアニメでも、またテレビドラマも、別の芝居もあって、それはそれで大切なものですけど、拉致問題を描くなら、同時に北朝鮮の体制の問題を、そこで苦悩している人々の視点から描いて行かないとその全体像は見えてこない。

この演劇にはセリフの中には北朝鮮帰国事業もきちんと出てくる。この帰国者たちが、自由な国日本から来たためにすぐ政府批判を口にし、多く処刑され、また収容所に入れられたことも語られる。めぐみさんがさらわれるシーン以上に、彼女が洗脳教育を強制されて精神を病んでいく、あえて言えば描きにくい、出来れば避けたい場面もきちんと出てきます。この部分のめぐみさんを演じた北よう子の演技はこの芝居の一つのピークになっていて、あえて言えば収容所のシーン以上に北朝鮮の体制の残酷さ、精神を破壊していく恐ろしさが描かれています。

そして、北朝鮮の政治犯収容所をめぐみさんの夢のなかで再現したシーン、そしてそこにめぐみさんの両親も囚人として捕らわれている設定を置いたのは、この演劇の脚本・演出上最も優れたシーンでした。ネタバレは控えますが、拉致被害者の悲劇も、ご家族の苦悩も、すべて、この政治犯収容所に象徴される北朝鮮の全体主義体制にあることが明確に打ち出されている。そして、そこからの脱出を試みて斃れていく囚人たちの姿は、悲惨というよりも、むしろ希望に向かって飛び立っていくように感じられる。

別に芝居が政治的メッセージを発しているわけではないんですが、この北朝鮮の体制が変わらない限り、この国の拉致をはじめとするテロ犯罪は構造的に変わらないし終わることはないことが伝わってくるはずです。北朝鮮との国交正常化を語るなら、まず、この北朝鮮体制そのものを「正常化」してからでないと意味はない。この演劇、まだ未見の方は是非一度ご覧ください。

あとついでに一言余計なことを。この芝居、「ヘイトスピーチ」バンバン出てくるんですけど、川崎市が堂々と上演したのは素晴らしいこと。いや、あれはほとんど日本人へのヘイトだからいいのかな?

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