[トランプ王国2」(岩波新書)は現代政治を考える上でぜひ読むべき名著

現代の政治を考える上で絶対に読んだ方がいい本の一冊は、金成隆一著「トランプ王国 2」(岩波新書)だと思います。金成氏は朝日新聞記者ですが、私の読んだ限り、トランプに投票する人たちの心理と置かれている状況を、これほど的確に、かつ愛情をもって報じた本は知らない。

この『愛情をもって』というのはすごく大事で、人間を理解しようとするとき、その表面の意見の違いを越えて、どこか彼の存在を認め受け止める姿勢がなかったら、絶対に相手は本気でものをしゃべるはずがない。この記者を朝日新聞や岩波はもっともっと評価すべきだと思う。もしリベラル派が復権するとしたら、このような人たちから始まるはず。

例えば、オバマ大統領の環境重視政策で石炭発電所をを閉鎖され、職も失ったある労働者が、トランプのパリ協定離脱宣言に対して叫んだ言葉。ここには、確かにアメリカのある種の本音がある。

「一党独裁の中国の排出制限をどうやって確認するっていうんだ。中国を信じるのか?中国が約束なんて守るわけがないだろ。隠れて石炭をバンバン燃やすにきまってんだ。アメリカが質問をすれば『国際的な協約を護っています』と答える.そういって、飲み屋で『アメリカ野郎を騙したぞ』とハイタッチしているんだ。パリ協定で大損をこくのはアメリカだ。だからトランプが脱退を決めたんだ。オバマみたいなナイーヴな指導者じゃ、アメリカは勝てない、負けるばかりじゃないか。」

そして、私がすごく共感したのは、地域のある民主党組織者の言葉。彼は、先の選挙の時も早い時期から党本部に警告を伝え、トランプを過小評価するな、選挙方針を変えないと大変なことになると主張してきた人です。

「(民主党は)工場労働者など、両手を汚して働いている人に敬意を伝えるべきです。重労働の価値を認め、仕事の前ではなく、後に(汗を流すために)シャワーを浴びる労働者の仕事に価値を認めるべきです。彼らは自分の仕事に誇りを持っている。しかし、民主党の姿勢には敬意が感じられない。『もう両手を使う仕事では食べていけない、教育プログラムを受け、学位を取りなさい。パソコンを使って仕事をしなければだめだ』そんな言葉にうんざりなんです。」

「民主党は自らを『労働者、庶民の党』と伝えてきた。しかし実際の民主党はメディアで、性的少数派の人たちが、男性用、女性用どっちのトイレを使うべきか、そんな議論ばかりしているように見えた。私が選挙中に聴かされたのは『民主党では、私の雇用より、誰かの便所の話ばかりしている』という声だったのです。」

「カリフォルニアやニューヨークは民主党が圧倒的に強い。今の民主党はシリコンバレーに住む超富裕層からほかのどの地域よりも献金が集まる。彼らが党を本来の争点から遠ざけてしまった。」

(今更昔のような雇用が地方に復活するのは難しい、という声に対して)「そんな言葉は候補者の口から聴きたくないんです。なぜ労働者のための政策を実施すると言えないのか。インフラ整備は代表例。壊れた橋や道路を補修すれば多くの雇用になる。彼らは汗を流して自分の腕で稼ぎたがっている。トランプはそれがわかっていた。労働者には、彼がワシントンに乗り込み、既成政治家や利益団体と闘うファイターに映った。その気概がうれしかったのです。」

「『グローバル化の波が達した(時代が来た)』というエリートと『あなたの仕事を取り戻す、既得権益と闘う』というトランプのどっちを労働者は支持しますか?答えは明白でしょう。トランプの過去の女性蔑視発言なんて、仕事を欲しているひとは意に介さない。労働者にとって最大の重要関心事は雇用。いくらトランプの道徳的な欠点を指摘しても心に響かないのです。」

引用に当たり多少文章を整理していますが、中々興味深いでしょう。ぜひ読んでほしい本の一つです。

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