拙著「ドストエフスキーの戦争論」11月19日に萬書房より発行となります。

拙著「ドストエフスキーの戦争論」ですが、萬書房様より11月19日に発売されることになりました。取り急ぎお知らせいたします。

晩年のドストエフスキーが個人雑誌として発行し、数千部(当時の読者人口から言えばかなりの数です)の定期購読者がいた『作家の日記』は、まさにドストエフスキーの「政治ブログ」と呼ぶべきこの文豪の生の声に満ちています。そこには偏見も極論も、時には差別的な言葉すら含まれていますが、その偏見や差別、ロシアへの徹底的な美化も含めて、この文豪の本質を感じさせるものがありますし、同時に、現代社会の様々な問題を直視させてくれる先見性を含んでいます。

拙著はこの『作家の日記』について私なりに論じたもので、正直、対象が偉大過ぎて力不足ばかりを感じていた日々でしたが、『作家の日記』’(ちくま文庫本で全6冊、全体の分量は『カラマーゾフの兄弟』の倍以上です)全体を読み通すのは結構大変と思いますので、少なくともそのダイジェストとしての役割だけでも拙著が果たしてくれればと考えています。

第一章で紹介した、ドストエフスキーが「アンナ・カレーニナ」を論じつつトルストイの平和主義を批判した部分は、まさに戦後日本で論じられてきた護憲派と改憲派の思想的頂点の対話のようにも読めます。

そして、ヨーロッパ文明に深い敬意を抱きつつ、しかしその近代主義、合理主義を批判して、「ロシアの聖なる信仰」を讃えずにはおれないドストエフスキーの姿には、明治以後の近代と格闘した日本知識人の姿そのものです。また、ロシアの対トルコ戦争に熱狂し義勇軍としてはせ参じるロシア民衆と、彼らを国家の論理を越えた聖なる精神を持って死地に赴く聖者たちとして讃えるドストエフスキーの文章は、まさに大東亜戦争そのものを思わせます。

この本は出版社の方が、もう売れないことは見えているのに無理をしてでも出してくれましたし、同時に著者の意をさらに明確に高めるような丁寧な編集をしてくださいました。どうか興味を持ちましたら手に取っていただければと願ってやみません。

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