バッハの思い出 (講談社学術文庫)  いいかげん、著者がバッハの妻ではないことを訂正してほしい、小説としては面白んだから

バッハの思い出 (講談社学術文庫) 、この本、確か20歳になったころ読んだ。その時は、アンナ・マクダレーナ・バッハ、つまりバッハの二度目の妻が夫の死後想い出を書いたものと思っていた。その後、この本はバッハの妻アンナの書いたものではなく、後世の女流作家、エスター・メネルによる小説であることは明らかになっている。だからもういいかげん、この本は、著者名をはっきり改めて出し直してほしい。いや、悪口ではない、そうしてくれれば中々面白く感動的な「音楽家伝記小説」として素直に読めるし人にも勧められるのだから。

多くの人もそうだと思うけど、私も小林秀雄がこの本を絶賛したエッセイを読んで購入した一人。小林は本書を勿論バッハの妻が書いたものと信じ、かつ、妻にしか書けない愛情と充実した夫婦生活を描いたものとして絶賛した。早速私も購入し、読んでみたのだけど、当時の読後感は、正直「何か、有名なエピソードばかりだな」というのと「どこか甘ったるい文章だな」と思った。でも、60近くなって読み返してみると、これは結構魅力的な小説だということが分かった。

ここで書かれているのは、はっきり言って、バッハの音楽が大好きな小説家のバッハへのラブレターだ。自分が尊敬し大好きな歴史上の偉人と会ってみたい、話してみたい、というのはだれしも思うことだけど、この小説家は、自分がアンナになりきってしまって、バッハへのラブレターを書き、さらにはバッハと暮らす夢を書いたのだ。本当にバッハが好きなことが伝わってくるから、少なくとも厭味はまったくない。小林秀雄も、たぶんそのあたりを感じ、思わず「バッハの子供を何人も生まなければ決してわからぬ人によって書かれた本」と思い込んでしまったのだろう。小林をそこまで感動させたこの本の魅力を、素直に味わうためにも、いい加減、著者名はきちんとしてほしい

何となくこの本を読んでいると聞きたくなる曲を一曲。「シチリアーノ」この曲もずっとバッハの作品として伝えられてきたが、どうも本当は違ったらしい。でも、名曲は名曲だからいいじゃないか。


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