「全日本南北戦争フォーラム」会報に、「黒人奴隷は『苦難の行軍』をしていたのか」を寄稿しました。

小川寛大氏らが主催する「全日本南北戦争フォーラム」会報に、「黒人奴隷は『苦難の行軍』をしていたのか」を寄稿しました。これは、不当なまでに読まれていない(と、思う)奴隷制度研究書『苦難のとき アメリカ・ニグロ奴隷制の経済学』(R.W.フォーゲル、S.L.エンガマン共著 創文社)を紹介したもので、少なくとも私は1ページ読むたびに愕然とし、時には怒り、疑い、最終的には説得されてしまった一冊です。

この本はアメリカ南部の黒人奴隷制に対し(1)奴隷制は経済的に成功していた(2)黒人への鞭打ちは、それを奨励していた農園主の場合でもせいぜい一人当たり年に一回くらいだった(3)黒人奴隷の食事は、当時のアメリカの労働者とほぼ同じかむしろそれより上のレベルだった(4)衣類や住居も、当時の時代を考えれば決して粗末なものではなく、衛生にも気を配られていた(5)奴隷の家族も引き離されて売られるようなのはむしろ例外で、農園主は家族制度の維持に心を配り、むしろ不義を厳しく罰した など、驚くような事実が述べられています。

著者は以上のような事例を、当時の資料を駆使して説明しており、かつ、これらは別に農園主が人道的だったからではなく、そのようにしなければ奴隷は労働意欲を起こさず、主人にも忠誠を誓わず、その結果、労働の成果も上がらないという「企業経営」の視点からなされていたと説明しています。

確かに考えてみれば、充分な食事を与え、衛生に気を配らなければ奴隷たちは病気になってしまうわけだし、機械化以前の農作業という厳しい労働に耐えられるはずもありません。賃金労働ではないのだから、農場主が自分たちを手厚く扱ってくれると思わなければ労働意欲も堕ちる。「アンクル・トムの小屋」の後半部で描かれたような、地獄のような綿畑での奴隷労働は、かなりの程度プロパガンダ色が強いものではなかったのでしょうか。

私もこの著者の意見に100%共感しているわけではありませんが、このような研究がアメリカでなされていたことはもっと知られていいと思いますので、今回紹介文を書かせていただきました。

お求めになりたい方は全日本南北戦争フォーラムまで連絡ください。uhh04659@nifty.com

今回の特集、私の文章はともかく、たくさんの力作原稿が載せられておりますし、江東映像振興事業団の先の上映会「南部の唄」についての評論も掲載されています。

なお、『苦難のとき』については、ブルース音楽につて書かれた本の中で最も斬新な批評がなされている研究書の一つ『ブルース世界地図』(鈴木啓志著 晶文社)でも適切な解説がなされていますので、興味のある方は是非お読みください

全日本南北戦争フォーラム

会報 Vol.11
2018年冬季号
特集「南北戦争とフランス」

ー目次ー

南北戦争期の外交概説
綿花国債狂騒曲
ナポレオン3世のメキシコ出兵
CSSストーンウォールの数奇な生涯
映画評『バトル・オブ・プエブラ』
南北戦争期の米仏に関わった人々

特別寄稿:黒人奴隷は「苦難の行軍」をしていたのか

活動報告:映画『南部の唄』上映会に参加
図書紹介:ジョン・キーガン著『情報と戦争』

連載

南北戦争のマイノリティ:亡国の民の南北戦争(南軍)
アメリカ政党略史:1856年大統領選挙
南北戦争と日本:北海道開拓と南北戦争③
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