エルドリッジ・クリーヴァ―没後20周年、彼の「転向声明」から一部紹介します。

これはだいぶ前、確か20代になったかそれくらいに読んで、えらく感動した言葉です。この言葉のように生きなばならんなと若き私は考え、全く実践はできなかったんですけど、今も時々思い返す言葉でもあります。

「人間を憎むことの代償は、それだけ自分自身を愛せなくなるということなのだ。」

この言葉は、60年代アメリカで最も過激な黒人運動家の一人だったエルドリッジ・クリーヴァー(ブラックパンサー党のリーダーの一人)のもので、彼の著作そのものにはあまり共感しなかったんですけど、この言葉だけは印象に残りました。

このクリーヴァ―という人は、白人への憎悪から、青年時代様々な犯罪を起こし逮捕されますが、獄中で左翼思想に目覚め、アメリカ黒人の精神的な抑圧と、その解放のための政治・文化革命を唱えた「氷の上の魂」という著作がベストセラーになります。

出獄後、60年代から70年代にかけて、アメリカ国内で黒人運動とマルクス・レーニン主義を合体させた黒人革命を主張、、かつ党員の武装を積極的に推進しました。キング牧師やマルコムXに比べ日本ではあまり有名ではないのですが、当時は黒人運動の理論家、実践者としてかなりの影響があったと思います。

1966年、パンサー党本部がFBIに襲撃され、クリーヴァ―も負傷し、地下に潜伏、キューバに逃れます。その後キューバに失望し、アルジェリア、中国、北朝鮮をめぐりますが、その過程でブラックパンサー党を離脱。1975年、正式に「転向声明」を発表しました。その後は反共保守の立場を取り、レーガン政権を支持。98年に亡くなります。

この1975年の「転向声明」は、作家の船戸与一から、これほど無残な言葉はない、と批判されたものですが、ちょっとここで紹介いたします。いや、無残というより結構当たっているような気もするので・・・

「我々がやったことを厳しく点検し、人々が我々に行う批判に耳を傾けるべきだ。我々は何らかの転換を準備しなければならない。私は社会主義圏を旅行し、身近にそれを見聞し、ソ連や中国がどう運営されているかを知った。」

「かっては社会主義が最も未来を代表していた。しかし、経験が示すところでは、社会主義や共産主義こそが、世界史上もっとも抑圧的な体制を人民に強制している。プロレタリアートの名の下で、しかしプロレタリアートにはよらない独裁だ。」

「我々はソ連との緊張緩和に向けて動くのではなくて、現在のソ連体制に絶対に反対していくべきなのだ。」

「私は今では、アメリカは軍事的に世界最大であるべきだと思っている。我々は米軍を後退させるべきではなく、強化すべきなのだ。」

「軍人は愛国的な存在であって、それは悪いことではない。私も愛国者に代わりつつある(クリーヴァ―はその理由を、現在の所、アメリカは法治の原則や人権が世界の中では守られているからだと考えています)。」

「軍人はプロフェッショナルで、これまでは右翼が支配してきたある政治的な路線を持っている。彼らはアメリカ人だから(意見は違っても)アメリカ人らしく扱わねばならない。本気でアメリカを良くしようと思うなら、軍人を排除せず、その動向を討論すべきだ。」

「時には、右翼が我々に言った批判が正しかったように思う。彼らは我々は裏切り者で、アメリカを敵に売り渡し、共産主義者を支持している、と言った。私にわかったことは、共産主義者はアメリカから単に右翼だけを一掃しようとしているのではないことだ。彼らは我々アメリカ人を全部やっつける相談をしているのだ。」

「私はアメリカが改善されることを望んでいるが、ぶち壊されることは望んでいない。我々は、アメリカを破壊しようとしている人たちへの警戒を怠るべきではない。」(豊浦志朗「叛アメリカ史」より、少し文章を変えてあります)

クリーヴァ―の転向後の著作は日本には全く紹介されていませんし、おそらく今後もされることはないでしょう。彼は反共主義を徹底していく中で統一教会やモルモン教にも接近し、晩年には、キリスト教とイスラム教の融合こそが今の世界では重要だという考えに向かっていったようですが、アメリカでも、かっての黒人革命家時代のような注目を集めることはありませんでした。

極左派から極右へのよくある転向、と言えばそれまでかもしれませんが、私は貧しさと差別の中犯罪に走り、希望と救いを革命に夢見て、口舌だけではなく実際に運動に突き進み、そして現実の中で自分の理想の過ちを知って転向した彼のような人間には、なんか変に共感するところがあるんですよね。

今年はクリーヴァ―が世を去って20年ということを急に思い出し、たぶん私くらいしか追悼する人もいないだろうと思い、こうして「転向」した時点での文章を紹介しました。でもここにある言葉自体は、そんなに滅茶苦茶ひどいこと言っているかなあ。いまの眼で見ればごく当たり前に読めるんだけど

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