「どうじょうの、はくしゅは、いらないのですね」 24時間テレビが放映するべきなのはドッグレッグスの試合だ!

前にも紹介したかもしれませんが、北島行徳氏の「無敵のハンディキャップ」(文藝春秋)はぜひ読んでほしい一冊。著者自身、家庭の乱れから一時は引きこもりになり、ボランティアの場に生きる場を見出しつつ、そこでの偽善性に気づいて「障害者プロレス」というジャンルを切り開いた。

しかし、そのプロレスがちょっとマスコミに取り上げられ、障碍者自身が、自分が社会に受け入れられたと思って軽い発言をし始めた時の、北島氏が彼に向けた言葉が中々すごい。以下、ちょっと引用します。

「私はいらだっていた。障碍者たちとの付き合いが深くなればなるほど、障碍者と健常者は違うと感じるようになってきたからだ。その違いに目を向けることなく、障碍者も健常者も同じ人間だというイメージだけが、この社会には定着している。空虚な現象が健常者の無関心を誘い、障碍者の苦悩を呼ぶのなら、ぶち壊すしかない。(中略)」

しかし、日頃は日常の仕事についていけない悩みや、恋人もできないことに苦悩して、何度も著者に電話してそれを打ち明けてきた慎太郎という障害者が、障害者プロレスの場で多少評価されたことで、安易に「障害者も健常者もない」という言葉を使い始めたことに、著者は怒って、次のように問いかけます。以下は引用です。

「要はさ、障碍者も同じ人間だと言われると、お前がうれしいんだろ。」

「まあ、ぼくも、うれしいですね(知的障害のある慎太郎の言葉を、著者はこのようにひらがなで語り口を含めて紹介します)」(中略)
「バカか、お前は。」

「障碍者と健常者は同じ人間だって言い方はさ、確かにすごく正しいことのように聴こえるよ。でも、この言葉に俺は大いに疑問を感じるね。それにさ、障碍者がそう発言して、一番喜ぶのは健常者だってことがわかってるのか。」

「よろこんで、くれるなら、ぼく、うれしいです」

「バカ、よい意味じゃなくて、悪い意味で言っているんだよ。障碍者について、どう思いますかって聴けば、障碍者も健常者も同じ人間なんて、誰だっていうよ(中略)。逆に、障碍者なんて大嫌いです、とはっきり人前で公言する人の方が珍しいだろ。」

「まあ、そうですね・・・」

「だけどさ、健常者の側からすれば、同じ人間だって言葉は免罪符みたいなもんなんだよ。同じということで、健常者について考えるのをやめているのが現状なんだよ。本当は、同じでないという現実から、眼を背けているんだよ。」

「はっきり言うけど、俺は障碍者と健常者は違うと思っている。もし同じだったら、この効率優先の世の中に障害者がどうやって溶け込むんだよ。必要なのは違いを認め合い、受け止めあうことなんじゃないのか。」(中略)

「そりゃ、同じと言われれば、その時は気持ちいいかもしれないよ。でも、それが結局無関心を生んで、まわりまわってお前の苦しみに返ってくるんだよ。それが、なぜわからないんだ。お前たちを苦しめている無関心な健常者を、さらに喜ばして、さらに思考停止にして、それで一体どうするんだ。」(引用終わり)

ここから北島氏の、健常者と障碍者がプロレスで戦う、というアイデアが生まれてくるのですが(ビッグ・バン・ボランティアというレスラーも登場)、この本のラストで、北島氏がレスラーとしてこの慎太郎をKOし、立ちあがれない慎太郎に「なんだ、そのざまは!お前の本当の敵は、俺の百倍強いぞ!よく覚えておけ!」と叫ぶシーンは、私にはすごい名セリフと思いました。

私は「戦争論」を書いていた当時も、今も、小林よしのりの作品をあまり好きではないです(これはあくまでも好き嫌いで評価ではないですからね)。しかし、この障害者プロレスをいち早く漫画で紹介し、「これを民放のゴールデンタイムでやればいいのだ。プロレス雑誌も、これを新団体と認めて、早く取材に来んか!」と絶賛したのは、やはりこの人の感性のすばらしさでしょう。

この本には、北島行徳氏が作詞し、障碍者である浪貝友幸が、「つめ隊」というバンドを結成して歌った「障害者年金プルース」の歌詞も収められています。

「中指立てれば 親父に殴られた

なにがパンクだバカヤロ 誰のおかげの生活だ
年金もらっているんだろう

髪の毛染めたら おふくろが泣いた

なにがパンクよ親不孝 反抗するんじゃありません
年金もらっているんだから

別に欲しくてただ金 俺はもらうわけじゃない

俺に稼げる場所さえあれば 耳をそろえて叩き返す
障害者年金 7万5千円
障害者年金 なくなると困る
障害者年金 お前らの税金
怒り溢れても パンクになれない

死んだっていらねえ 俺はパンクロッカーだぜ

そう叫べばほんとうに、明日からは生きていけない」(障害者年金ブルース)

「どうじょうの、はくしゅは、いらないのですね」本書の慎太郎の言葉は重い。小林よしのりではないですが、私もあえて言いましょう。24時間TVは、この団体こそ取り上げるべきなのだ(拒否されるかもしれんが・・・)

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