チャップリンが最後に撮ろうとしていた映画「フリーク」 これは是非みたかった

「チャップリン 作品とその生涯」(大野裕之著 中公文庫)は、チャップリンファンの私には楽しく読めるエピソードが満載でしたが、ちょっと衝撃を受けたのは、チャップリンが80歳の時(1969年)再び映画を撮ろうとしていたことと、そのストーリーが紹介されていたことでした。

題名は「フリーク」。南米のチリで、ある歴史学者があらしのよる、翼の生えた少女サラファと出会います。サラファは大評判となり、多くの人が彼女を一目見ようと押しかけますが、中には、彼女を利用してある種の新興宗教を起こそうという人間がいました。彼はサラファを誘拐してイギリスに連れ去ります。

しかし、天使として教祖に祭り上げられたサラファは、人々が自分を熱狂的に祭り上げるのに恐怖して叫びます。「私は自分が天使なのかどうかは知りません。皆は私のことを特別だと言います。しかし、人は皆特別なのです。」サラファは逃れようとして、手に持っていたハサミで彼女を誘拐した男を刺してしまい、殺人の罪で拘束されてしまいます。

しかし、警察当局もサラファの扱いには悩みます。出生記録もパスポートもなく、また、翼の生えた彼女が人間なのか動物なのかもある意味わからない。そこに、チリから歴史学者が到着し、彼女のために尽力、事件も、正当防衛だったことが立証され、サラファは釈放され、その身分も一市民として認められます。歴史学者は「これで彼女も普通の市民として暮らせる。一見落着だ」と安心します。

しかし、ここで物語は終わりません。サラファは自分が救われたはずのその日の夜、一人、本当の自由を求めて飛び立ち、大西洋を渡る途中に、ついに力尽きて死んでいきます。

以上のあらすじを大野氏の本で読んで「これすごいじゃん!」と、正直私は驚きましたね。ある意味唐突ともとれる悲劇的なラストも含めて、これは絶対見たい作品。中には、年老いた浮浪者が空を飛ぶサラファを驚いて見上げる、というシーンもあるようで、たぶんそれはチャップリン自身が演じたかったんでしょうね。

これも私が大金持ちか映画会社の社長か何かだったら、これ絶対アニメにしたい。1969年という時代に書かれたシナリオだけど、今読んでも全然古くないストーリーだと思う。ああ誰か私に何億円かくれないだろうか。これこそ宮崎駿が撮るべき作品ではないかとマジに思う。例の事件で今は入手しにくいのかもしれないけど「On Your Mark」というチャゲ&飛鳥の曲に宮崎がつけたアニメは個人的には彼の最高傑作ではないかとすら思いますが、それを越えるものになるんじゃないかな

「On Your Mark」は「耳をすませば」と同時上映で1995年に公開されたんですが、もう、ちょっと言葉にならないほどの衝撃でした。冒頭、カルト武装宗教施設に警官隊が突っ込んでいき、そこに捕らわれていた翼の生えた少女を救い出す、というシーン、これが、全くの偶然だけどオウム事件の年に公開されたんですよ。このアニメでは二つの全く違ったストーリー(バッドエンドとハッピーエンド)がつけられていて、それがどっちも魅力的という不思議な作品だった。1995年という、大震災とオウム事件の年、あの時何かが確実に変わったように今でも私は思っています

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One Response to “チャップリンが最後に撮ろうとしていた映画「フリーク」 これは是非みたかった”

  1. Kazu Emu より:
    三浦先生は、名優チャプリンのファンでいらしたんですね。この『フリーク』は、チャプリンのオリジナル脚本なのでしょうか?興味深い筋立てですね。
    今から40年以上前ですが、「東和」という映画配給会社が、一連のチャプリン映画を、連続リヴァイヴァル上映しましたね。私は、あのとき初めて観て、チャプリンの映画に感動しました。
    第一弾の『モダンタイムス』は、主人公が、ポーレット・ゴダード演ずる彼女と、彼方へ歩んで行くラストが印象的でした。また、有楽座で『チャップリンの 独裁者』を観ていた時は、終盤の有名な演説シーンの後、劇場内に満場の大喝采(!)が起こると言う体験も。そのあと、後世に残る快作名作は観ましたが、あの様な拍手喝采までは、流石に起きませんでした。
    チャプリンの映画作品は、腹筋が痛いほど爆笑させられ、終幕近くには、恰も夕暮れに茶の間の電球がともる様に、暖かい気持ちにさせられ、ジワリとこの作で訴えたい、チャプリンのテーマに観衆が想い到る、という傾向がある様に思います。
    この『フリーク』をチャプリンが撮影したら、どのように、この悲劇的なラストシーンをチャプリン的に演出したか。興味が沸きますね。

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