「師を謗るな」

渡辺京二氏にお会いした時のこと。吉本隆明氏が「師を謗(そし)るな」ということをとても強調していたとお聴きしました。
戦後民主主義の最良の体現者(と、私は思っています。同時に、その限界を表した思想家でもありました)であり「弟子一人持たず候」と語っていた吉本氏が、実はどれだけ、真の意味で「庶民」のモラルを大切にしていたががわかる言葉です。今回、西部氏の自裁とその後の様々な言論の中で、私はこの「師を謗るな」という言葉を思い起こしています。

これはまだ先の話で、実るかどうかもわからないのですが、私なりの西部論をそのうち書かせていただければと思っています。そこでは正直、西部氏の思想について、やはり私が相容れないところは批判することになるかもしれませんが、その際にも「師を謗るな」という言葉だけは常に念頭に置いておくつもりです。これは上下関係でも義理人情でも恩義でもなく、人間と人間の関係の在り方として大事だと思っています(批判と「謗る」ことは違うはずです)

誤解なきよう言っておきますが、私は「表現者」に連載はさせていただいておりましたが、西部氏は私の文章に対しては「カッコつけすぎてる」と、批判以前にもう否定的でした。それでも書かせていただいたのは、まあどこかで少しでも評価してくださったのか、眼中になかったのかのいずれかだと思います(もしくは富岡先生がかばってくださったのか)。しかし、それとは関係なく、私にとって西部氏は「師」ではなかったかもしれませんが、このような知識人が一人いることが、人間を堕落から救うことにつながるのだ、と思えるような方でした。

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