SAY SAY SAY このMTVはまさに傑作

まず、このMTVをぜひ見てください。いまは亡きマイケル・ジャクソンとポール・マッカートニーの共演。1983年の作品

舞台はおそらく南北戦争前後のアメリカ。オープニングでリンダ・マッカートニー登場。続いてポール。簡単に言えば「この薬を飲めば誰でも元気に、筋肉に力が付きますよ」という宣伝をはじめる。すると、いかにもやせていて瓶のふたも開けられないマイケル・ジャクソンが登場、彼が一口飲むといきなり素晴らしいダンスを見せ、さらに大男に腕相撲で勝利。これが当たって薬は売れまくり。札束を数えながら荷馬車で行くポールたちにマイケル・ジャクソンが乗り込んでゆく。要するにやらせですね。

そのあと、儲けたお金で孤児院らしいところに行きお金を置いて行った後、今度は酒場でマイケルとポールが芸をするシーン。ここで、2分47秒あたりで、もちろんこれはひげをそるためなんだけど、ポールが石鹸で白く顔を塗るところがある。これがまず、当時のミンストレル・ショーのパロディで、ポールがその逆をやっているところ。ミンストレル・ショウとは、19世紀前半にアメリカで大流行した芸で、最初は白人が顔を黒塗りにして、滑稽な黒人像を演じ、歌い、踊るショーだった。

さらに3分30秒、ポールが顔を黒く塗って唇を強調するのはまさにミンストレル・ショーそのものの化粧。よく見るとマイケルもちょっと化粧している。これは、特に南北戦争後、黒人も堂々と芸人としてステージに出る時、別に黒く塗る必要はないのに、それまで顔を真っ黒に塗って黒人性を強調していた白人芸人に合わせるために、もともと黒い皮膚をさらに塗ったことのパロディかも(なお、ここでマイケルの姉ラトーヤ・ジャクソンが出てます)

ついでにいいますと、冒頭出てきた偽薬とか、いろいろな怪しげなものを売る商売というのは、このミンストレル・ショウの合間や、旅芸人の芝居の幕間につきもので、ポールとマイケルの冒頭のシーンはそれを忠実に再現している。3分50秒からの本の10数秒ほどのマイケルのダンス、これ、私は以上のことをいろいろ考えながら見ると本当に奥深く感じる。

この「SAY SAY SAY」という曲自体は正直私はそれほどの曲ではないと思う。しかし、このMTVは何度見ても、よくできた短編映画のような面白さがあります。私はポール・マッカートニーという人の素晴らしいところは、少なくとも自分の音楽に対しては、余計なことを言葉で語らないことだと思います。こういうMTVでのポールの生き生きとした姿を見ていると、もちろん役者としては素人ですが、彼がアメリカ音楽の歴史と、そこでの様々な人種の問題をきちんと音楽家として受け止めていたことがわかる。

マイケル・ジャクソンは確かに大ヒットしたけど、ある意味マスコミの餌食にもなり、一部の黒人音楽ファン(それもやや心の狭い)からは白人に媚びているとか言われ、冤罪やスキャンダル(マイケルに対する生前のいろいろなスキャンダルや、少年を虐待したとかはほぼ虚偽だったと思います)にも見舞われた。

マイケルのMTVはたくさんの傑作があるけれど、私はやはりこの「SAY SAY SAY」が一番好き。ファンタジー映画やアニメーション、また時にはホラーの要素がある他のマイケル制作のMTVのほうがもちろん彼にとっては好きな作品でしょう。でもこのMTVのマイケルが、なぜか一番素直に、彼自身を演じているようになぜか感じてしまう。(後余計なことを言いますが、リンダ・マッカートニーがこの映像ではなかなか素敵に見える)

私は年末の「ガキの使い」観てないし、ダウンタウンも好きでも嫌いでもない(失礼ながらよく知らない)ので、浜田氏のブラックフェイスについてもここで論じるつもりはありません。ただ、こういう素晴らしい映像をまずこういう時は紹介しておきたい。MTVの監督はボブ・ジラルディ。彼には「ディナーラッシュ」といういい映画も撮っていますが、個人的にはこのMTVも彼の傑作だと思う

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