「ここは南ですか」「韓国の歌が聴きたい」 銃撃受けた北兵士が意識回復 韓国紙報道 

このニュースはどうしても書いておこうと思います。

「ここは南ですか」「韓国の歌が聴きたい」 銃撃受けた北兵士が意識回復 韓国紙報道 

朝鮮半島の南北軍事境界線がある板門店で韓国側へ越境しようとして銃撃を受け、重篤な状態にあった北朝鮮兵士について、韓国紙、東亜日報(21日付)は韓国政府消息筋の話として意識を取り戻し、簡単な言葉を口にするまで回復したと報じた。

 兵士は18日から自力で呼吸するまでになり、医療スタッフの言葉を聞き取っているようにまばたきしたり、表情を変えたりするなどの反応を見せている。兵士は「ここは南側(韓国側)ですか」と尋ね、韓国にいる事実を確認。また「韓国の歌が聴きたいです」と話したという。

 兵士はこれまで2回の手術を受けており、北朝鮮からの銃撃で肘や肩、腹部などに5、6カ所の銃創がある。また肺炎の症状が深刻な状態にあるという。

http://www.sankei.com/wor…/news/171121/wor1711210056-n1.html

とにかく生きてほしいとしか今は言えません。いま、北朝鮮で、民衆や兵士が自発的に決起して体制を倒す、という可能性は、私の考えでは限りなくゼロに近いものです。

その理由は何度か書いたりしゃべったこともあると思いますが、徹底した全体主義体制というのはそんなに甘いものではありません。ポルポト体制、スターリン体制、毛沢東体制、いずれも、民衆が蜂起し政権が打倒されて倒れたわけではありませんでした。全体主義独裁は、外部からの強い圧力、或いは国内矛盾が極限まで高まることで、権力内部に動揺が起きる形でしかかわるものではありません。

今北朝鮮民衆にとって、唯一の抵抗手段は、厳しい監視をかいくぐって脱北することだけです。そして、この38度線の警備兵や、国境線付近に住む民衆は、一番い警備兵や、国境線付近に住む民衆は、最も脱出が難しい地域のはずです。

韓国に住む脱北者の李民復氏は、自分の働いたお金のほとんどをつぎ込み、生活や家庭が危機に陥っても、支援者たちと共に国境線上から、風船に対北ビラをつけて何年も飛ばし続けてきました。勿論他にも同じことを行っている団体はありますが、彼が最も持続的に、かつ、パフォーマンスに走ることなく、地域住民とも対立しない様に目立たずに風船を飛ばしてきましたし、そこには荒木和博さんのビラもしばしば同封して送ってきました。

他にも、自由北韓放送のキム・ソンミン氏は、ラジオで北朝鮮向けの放送を続けてきましたし、韓国政府も不充分とはいえ、対北放送を行ってきました。国境線上ということは、何らかの形で韓国のラジオを聴くチャンスもあったことでしょう。

今の段階では何もわかりませんが、少なくともこの北朝鮮兵士は、死を覚悟して自由の国を目指した。その一点だけでも、彼は独裁政権の恐怖と抑圧に打ち勝った人間と思います。まだ危険な状態が続いているようですが、とにかく生きのびてほしいと祈るばかりです。

そして「韓国の歌が聴きたい」という言葉、これには染みるものがありました。私は、共産主義体制が倒れた最も大きな理由の一つに、そこには人々を心から感動させる音楽も文学もなかったからだ(あったとしたら、それはその体制に根本的に反対する側、少なくとも面従腹背の側にしかなかった)と考えています。

ソ連には素晴らしいバレエやオペラはあったでしょう。しかし、それは古典を再現したもの、ロシアバレエの伝統が残っていたからだった。スターリンや毛沢東を讃える音楽、歌、文学、これは歴史の研究対象ではあっても現在の鑑賞に堪えるものではない。共産主義体制においては、あらゆる芸術はプロパガンダ化され、個人ではなく党派のものとなってしまうからです。

人間がその素直な感情を、権力や左右のイデオロギーに関係なく、素直に発揮した音楽や文学、映画、美術などがない国で、人間はその精神を解放することはできない。この一点のいて、どんなに矛盾や問題があるにせよ、自由と民主主義は共産主義独裁より優位に立っている。私はその意味では「ペン(もしくはギターでもフィルムでもいいんですけど)の力は権力より強い」という古い言葉を今も信じています。

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