祝!カズオ・イシグロ氏ノーベル文学賞(2)「私を離さないで」

カズオ・イシグロ氏の作品「私を離さないで」は、透明な素晴らしい文章(翻訳もいいんだろうけど)のおかげで読み通すことはできたけれど、本当につらい小説だった。正直、再読はできず一度だけで本棚の隅に置かれたまま。この作品も映画化されているが、ぜひDVDレンタルでいいから見てほしい。「日の名残り」もそうだけど、本当に原作に敬意をもって映画化していることがわかる。日本でも確かテレビドラマ化されましたね。私は未見ですが、あの原作をドラマ化したプロデユーサー、スタッフには敬意を表します。ろくにテレビを見ない私ですが、志のある方々だと思います

ある意味クローン人間、臓器移植のためだけに生きている少年少女の物語という、救いも何もない話なのだが、彼らは単なる犠牲者として描かれるのではない。たぶん凡庸な作家だったら、彼らを「管理社会の犠牲者」として描き、悩ませ、最後には抵抗に立ち上がるか、あるいは苦悩の内に破滅するか、そういうテーマに落とし込んでしまったと思う。しかし、原作も小説も、そういう通俗的な物語には絶対ならないところがすごい。

彼らが、運命を受け入れ、日常のささやかな感情の揺れを大切に受け止め、そして、「死」を一つの日常のごとく受け入れていく姿に、なんだかこの少年少女こそ本当の意味で聖者なんじゃないか、こういう人たちを「犠牲者」と見る視点こそが傲慢なんじゃないかとまでもと思わせるし、同時に、彼らのような存在を生み出す社会というのは恐ろしいほどエゴと「健全ファシズム」、自分たちの健康と平和さえ守られればその背後に何があってもかまわない社会のはずで、これこそ私たちが今生きている現実じゃないか、とも考えさせられてしまう。でも、この作品についてはちょっとこれ以上書けないので、「日の名残り」同様、お時間のない方はDVDを、それで感銘を受けたら原作を読んでほしい。

最後に、文学にこういう現実を対比させるのはよくないことはわかってます、わかってますが、ジャーナリストの野村旗守氏が今訴えている中国の臓器移植についての文章を紹介します。この問題は日本では充分報じられているとは言えませんが、その理由の一つは、犠牲者の多くが法輪功の修練者であり、その情報に疑問を持つジャーナリストが多いということもあると思います。しかし、法輪功をどう評価するかということと、事実として、この日本からも含めて、きわめて犯罪的な臓器移植が行われていることとは切り離して考えるべきだと私は思います。野村氏のこの文章をお読みくださるようお願いしますし、今後この問題に、もっと日本国の政治家もジャーナリストも関心を示してほしいと思います

野村旗守ブログから 中国「臓器狩り」の闇

現在進行中の「人道に対する罪」

いまだにオウム事件の残影が瞼の裏にちらついているか、それともやはり、中国共産党からの報復を怖れるのか――。

 中国共産党政府による法輪功弾圧と、信者(法輪功はみずからを宗教団体ではなく気功術愛好団体と称し、愛好者たちを「信者」ではなく「学習者」と呼ばせている。けれども私は宗教団体と考えているので、ここでは「信者」と呼ぶ)に対する虐待を報じない日本マスコミのスルーっぷりは目に余る。

 もちろん、新興の宗教団体に対する偏見と警戒は日本に限った話ではない。当初平和的な祈祷サークルのように見えた団体が、のちに暴力的な狂信集団に様変わりしたなどの話は歴史のなかにいくらでもある。だから、特定の宗教団体の主張に与して後で痛い目に遭うのはゴメンだというマスコミの心理はわかるのだが、中共政府による法輪功虐待はすでに宗教弾圧の域を超え、「人道に対する罪」のレベルに達していると言っても過言ではない。

 ニュルンベルク裁判で初めて用いられた国際軍事裁判所憲章は、「人道に対する罪」をこう規定した。

「国家もしくは集団によって一般の国民に対してなされた謀殺、絶滅を目的とした大量殺人、奴隷化、追放その他の非人道的行為」

 国際報道によって次々に明らかにされた中国の法輪功弾圧は、まさにこの範疇に入る。 政府(国務院=公安)と人民解放軍、2つの系統で実行されてきた中国の「臓器狩り」は90年代末頃から明らかになり、2000年代には国際社会にも波紋を広げていった。最大の犠牲者となったのが中国公安によって拘束され労働収容所に入れられた法輪功の信者たちで、臓器移植を希望する国内外の権力者や金持ちたちの需要に併せ、場合によっては生きたまま臓器を摘出された揚げ句、闇に葬り去られてきたのである。

 中共政府によって法輪功への弾圧が開始された1999年の夏以降、数十万人の信者が身柄を拘束され、そのうち10万人以上が収容所へ監禁させられたと推定されている。

 米国務省の2008年版国別レポートは次のように報告した。

「中国の労働収容所には25万人が収容されている。外国の観察者のなかには、そのうちの少なくとも半数が法輪功信者であると推計をする人もいる」

 この労働収容所こそが需要に応じて提供を行う〝生体臓器バンク〟に他ならない。

 当然のことながら中国政府がその実態を明かすはずもなく、生きた人間から臓器を摘出する「臓器狩り」の全貌は必ずしも明らかになってはいない。しかし、中国が国家意志として「臓器狩り」を行っていたことは、同国衛生部の元次官・黄潔夫氏がすでに05年にマニラの国際会議で証言しており、「(中国の)臓器移植の95%は死刑囚から摘出されていた」ことが判明した。そしてこのことは同時に、臓器の需要に併せて死刑が執行されていた可能性をも示唆したのである。

 「死刑囚」のうち法輪功信者がどれほど含まれていたのかは定かでないが、法輪功側は「少なくとも数万人の単位と見積もっている」(NPO法人日本法輪大法学会の広報担当者)と回答する。先の米国務省レポートと照らしても、あり得ない数字ではない。

 実態が解明されれば、これこそ「人道に対する罪」以外の何物でもない。さらに最近、習近平政権による「虎も蝿も」の反腐敗キャンペーンにより、この中国「臓器狩り」が巨大な利権を産み出す「臓器ビジネス」であったこと、そしてその黒幕が前政権の最高指導部、政治局常務委員の1人で司法・公安を統括した周永康であったことが判明した。

 欧米マスコミは大々的に報道

 日本マスコミの無関心とは裏腹に、海外ではここ数年、中国の「臓器狩り」を取り上げた報道が立て続けに脚光を浴びている。直近では、今年四月、中国の臓器売買を扱ったドキュメンタリー映画『人間狩り(Human Harvest)』が米放送界の名門、ピーボディ賞を受賞した。ビーボディ賞というと日本では余り馴染みがないが、1941年に創設されたアメリカ最古の栄誉ある放送作品賞で、「放送界のピューリッツァー賞」と称されることもある。日本からも過去、フジテレビやテレビ朝日、NHKが単独受賞している。

 監督は中国系カナダ人のレオン・リー氏。国際調査による数々の証拠を提示しながら、中国が国家ぐるみで受刑者の生きた人体から臓器を抜き取っている現実を指摘した。中国で臓器移植手術が劇的に増加した十数年前からの時期と、法輪功の弾圧がはじまった時期とがほぼ一致するという。同作品は一昨年11月にも、世界最大のオンライン映画祭「ビュースター・オンライン映画祭」の最優秀賞を受賞した。

 他にも、13年6月には一連の臓器狩り報道で「大紀元(国際的なネットワークを持つ法輪功系新聞)」英語版の記者が米プロフェッショナル・ジャーナリスト賞を受賞。また12年5月には、中共政府による法輪功弾圧を描いたドキュメンタリー『フリーチャイナ』が米言論自由映画祭の優秀作品賞を受賞した。法輪功信者への迫害を主に扱っているが、「臓器狩り」にも触れている。同作品は、「アウェアネス・フィルム・フィスティバル」や「第45回ヒューストン国際映画祭」でもドキュメンタリー部門の作品賞も受賞した。

 またフランスでも10年5月、中国から脱出したパリ在住の法輪功信者を描いたドキュメンタリー作品が国際的な報道作品に送られる「ダニエル・パール賞」を受賞した。

 そして、これら一連の「臓器狩り」と法輪功迫害報道に関する国際報道の元になった、いわば「基礎データ」ともいうべき先駆的調査資料が、デービッド・マタス、デービッド・キルガーという二人のカナダ人弁護士の共著『中国臓器狩り(原題Bloody Harvest、邦訳=アスペクト)』である。

 著者たちのバックグラウンドが、同書が信頼に足る調査に基づいて編まれていることを裏付ける一助となるだろう。

 デービッド・マタス氏は1943年、カナダに生まれ、オックスフォード大学で法学士号を取得した弁護士。国連総会カナダ代表団のメンバー、国際人権と民主発展センター長、カナダ憲法・国際法律条例主席などを歴任。現在は連邦法廷法律支部連絡委員会委員長と、NGO組織「国際反拷問連盟」の共同委員長及びシニア法律顧問を務める。片や、デービッド・キルガー氏は、1941年カナダ生まれの弁護士で、トロント大学で法学士号を取得。バンクバー市検察官、オタワ司法上級顧問を経て、79年から06年までカナダの下院議員を務めた。任期中は、アジア太平洋州担当大臣として閣僚経験もある。

 マタス氏によれば、2人は2006年5月、中国の法輪功迫害真相調査連盟(CIPFG)から「臓器狩り」に関する実態調査の依頼を受けた。著者たちは職業的にも思想的にも教団とは過去に一切の関わりがなく、そして金銭の介在に関しても、「事後、CIPFGに領収書を提出して調査経費の提供は受けたが、向こうから申し出のあったもので、こちらから要求したものではない」とマタス氏は言う。ごく率直な説明であり、納得できる。

 世界中の議会も動き出す

 著者の一人、デービッド・マタス氏は昨年6月にも来日した。そして、各地で講演を行い、現在も続いている中国「臓器狩り」の実態を訴えた。

「中国に渡れば心臓を13万ドル、腎臓を6万5000ドルで移植することができる。臓器を提供するのは強制収容所や刑務所の収監者。その大部分は法輪功の信者だが、なかにはチベットやウィグルなどの少数民族も含まれている。この人類史上未曾有の犯罪をストップするには、国際社会に広く真相を知らせる以外他に方法はない」

 それだというのに、日本の大メディアはこの重大過ぎるほど重大な人道問題をどこも扱おうとしない。

 日本語版の版元によれば、北米では09年に出版された同書の邦訳が一昨年の終わりになってようやく出版にこぎつけたのは、「中国から妨害があったわけではなく、日本の出版界の自主規制によるところが大きかったようだ」という。

 新聞社はどこも中国に支局を抱えているし、出版社も大手となれば中国に営業所を設けて現地で何らかの取引のあるところが多い。ようするに、触らぬ神に祟りなし……と、先回りして中国からの報復を回避したということである。マイナス志向で事なかれ主義の昨今の日本マスコミ界の体質がここにもあらわれた。

 中国最大のタブー!

 と、帯に謳われた同書の内容は衝撃的だ。1年以上にわたる調査の結果、著者たちは「法輪功学習者を主な対象とした臓器狩りはたしかにおこなわれ、そして現在も続いている」との結論にたどり着いた。そして、帯はこう続く。

 裁判にもかけられず、政府軍公認のもと、生きたまま臓器を摘出され死亡した、多くの法輪功被害者の真実。国連人権委員会、アメリカ議会、欧州議会で議論……。

 07年6月に米ニューヨーク州議会がシンポジウムの議題にとり上げたのを皮切りに、同年9月にはニュージーランドの国会が、12年には米下院が中国の「臓器狩り」問題を俎上に載せた。

 
 米議会は「(法輪信者に対する臓器狩りは)魔の行いであり、信仰あるいは政見が異なることを理由に監禁されている人から臓器を盗みとることは、人類に対する重大な犯罪である。この罪悪に加担しているすべての人間を法で裁くべきだ」と決議した。また、「主流メディアがこれほどの重大犯罪を報じないことは、ジャーナリスムの歴史に対する冒涜である」とも述べた(9月20日、外交調査と監査委員会)。

 そして、13年は矢継ぎ早だった。 1月に欧州議会が公聴会を開いて、中国の臓器狩りに対する調査を求める請願書を発行、その後昨年までに36ヵ国で16万6000人以上の署名が集まった。2月にはカナダと韓国の国会がそれぞれ公聴会と専門家による諮問委員会を開き、オーストラリアではニューサウスウエルズ州議会反対決議をした。 そして4月と6月には英国議会もこの問題をとり上げて国民の臓器移植目的の中国旅行を禁止するなど措置をとり、7月にはふたたび米下院で議題に上った。

 さらに11月に入ると、再度英国議会、スウェーデン議会、フランス議会、香港立法院議員によるシンポジウムで、12月にも欧州議会、イタリア下院議会などで「中国臓器狩り」事案が問題化。非難決議や調査請求が相次いだ。

 これらは、マタス、キルガー両氏が詳細な調査資料をもとに、中国の臓器狩りの実態を世界中に訴えた成果である。この功績により両氏は、2010年のノーベル平和賞候補にノミネートされたこともある


 世界でここまで認知されている問題を、日本では国会もマスコミもまったく取り上げていないというこの事態は、国際的な面恥ではないか。

 中共政府による「邪教」キャンペーン

 我々日本国民のうち決して少なくない数が、駅頭や政治集会などで時折見かける法輪功信者らによる街宣活動によって、中国では国家による教団弾圧と「臓器狩り」がおこなわれているらしい、ということを何となく知っている。

 かくいう私も、金子容子さんの救出運動が繰り広げられていた時期、所用があって毎週のように永田町の議員会館に出入りしていたことがあり、そのたびに門前でビラを配る学習者たちの姿を眼にした。そして何度かはビラを手にして眼を通したはずである。けれども、法輪功という団体そのものに何となく“得体の知れない中国の宗教団体”というイメージがあったのと、掲載されている写真があまりにグロテスクで現実離れしているように見えたのとで、正直、疑う気持ちのほうが強かった。

 それに加えて、中国共産党政府による「法輪功=邪教」宣伝もあった(日本の中国大使館は法輪功について「中国のオウム真理教」と説明している)。中共側の宣伝に与するつもりはないが、かといって法輪功側の言い分を鵜呑みにする気にも仲々なれなかった。

 しかし、マタス、キルガー両氏による克明な告発の書を読了した現在となっては、そんな自身の不明を恥じずにはいらなれない。

現実問題として、90年代の終わりから現在にいたるまで、中国人民解放軍の息のかかった強制収容所や特別刑務所、そして病院等で行われていることは、我々の想像を絶することだ。

「人類はこれまでにもさまざまな悪行を重ねてきたが、ここまで邪悪な行為は過去に例がない」

 とマタス氏が言うように、ホロコーストを凌ぐほど無慈悲で残虐な蛮行が、中国では自国民に対して実行されている。俄に信じがたい話だが、しかし、たとえば臓器の摘出手術が行われたという病院の、元職員の次のような証言を聴く時、我々は襟を正して現実に向かい合わざるを得ない。

 いまを遡ること9年前の06年4月20日、ワシントンDCで開かれたシンポジウムでアニーと仮称する中国人女性が衝撃的なスピーチをおこなった。内容は、物資調達担当係として彼女が働いていた遼寧省血栓中西医結合医院(蘇家屯医院)で彼女が見聞したことの一部だった。さらに『中国臓器狩り』のもう一人の著者、キルガー氏が後日彼女にインタビューを申し込み、より詳細な話を聞きだしている。

 以下は同書の第9章「蘇家屯強制収容所の報告」からの抜粋である。

 目撃者による証言

キルガー:(蘇家屯医院で)実際には何が起 こったのですか。まず食糧の調達量が増え、それから手術器具が増えたのでしょうか ?

アニー:(略)領収書を見て、購入する食糧 が急激に増えていることに気づいたのです。それに加えて、物資担当の人たちが法輪 功信者が拘束されている場所に食料を届け ていました。
キルガー:法輪功信者が拘束されていた場所 は地下の施設だったのでしょうか?
アニー:病院の裏庭です。(略)何カ月かし たら、食料や他の備品などを購入する量が減ってきました。
キルガー:それらの量が減ったのはいつです か?
アニー:四ヵ月後か五ヵ月後です。
キルガー:2001年の終わりですね?
アニー:はい。
キルガー:(略)そこには何人くらいいたと 思いますか?
アニー:法輪功の食料を調達して届ける係の 責任者から聞いた話では、「大体5000人から6000人は拘束されていたそうで す。そのころ中国各地で、たくさんの公安 局や病院が法輪功信者を拘束していました 。病院で働く人の多くは法輪功信者ではあ りません。私も違います。(略)

 離婚した彼女の当時の夫は、この病院に勤務する医師だった。

アニー:最初のうちは、元夫も(略)法輪功 の信者だとは知りませんでした。彼は脳神 経外科医です。角膜の摘出をしていました 。そして2002年になって、自分が手術 しているのは法輪功信者だと気づいたのです。うちは臓器移植専門の病院ではないので、ただ摘出するだけでした。(略)

キルガー:手術される人たちは、生きていましたか。それとも死んでいましたか?
アニー:通常、そういった法輪功信者たち は、心臓麻痺が起こるような薬品を注射されていました。そして手術室に運ばれ、臓 器を摘出されます。注射のせいで心臓は止まっていますが、脳はまだ機能しています。(略)
キルガー:あなたの元夫は角膜を摘出した。 手術の後、角膜を取られた人たちはどうなったのでしょう?
アニー:他の手術室に運ばれていきました。 心臓、肝臓、腎臓などを摘出するためです。夫はある手術で他の医師と一緒になったときに、彼らが法輪功の信者だということを知ったそうです。それから、彼らが生き たまま臓器を摘出されるということや、角 膜だけでなく他の臓器も取られるということも、おなじ時に知りました。
キルガー:他の臓器の摘出は他の手術室で行っていたのですよね?
アニー:後になって、医師たちが共同で作業するようになり、それからは一緒に手術を行うようになりました。最初のうちは情報が漏れるのを恐れて、臓器ごとに摘出する 医師と手術室を変えていたのです。でも後になって、お金が入るようになると、もう 何も恐れなくなりました。おなじ部屋でさ まざまな臓器を摘出するようになったのです。(略)うちの病院で手術された信者は、腎臓や肝臓などの臓器が摘出され、皮膚が剥がされると、後はもう骨と肉ぐらいしか残りません。そういった遺体は、病院の ボイラー室に放り込まれました。
   ………………
 アニーの元夫は、2年ほどのあいだに2000人ほどのドナーから角膜の摘出手術をおこなった。そのたびに月給の何十倍もの現金が支給され、彼女の元夫は通算で数十万ドルの現金を手にしていた――とアニーは言う。 

 角膜以外に摘出される臓器は、心臓、肝臓、腎臓が多かった。たとえば肝臓なら、摘出された臓器は約20万元(約300万円)でレシピエント(患者)に移植されていた。

 「これはオンデマンド殺人だ」

 マタス氏らとは別に、中国共産党政府による国家ぐるみの臓器ビジネスに関して独自の研究を進めていたのは、ミネソタ大学公衆衛生研究所のカーク・アリソン博士、英国の著名心臓外科医で移植手術の権威でもあるトム・トレジャー医師、イェール大学研究員の王浩氏らだ。

 トレジャー医師によれば、2000年代半ばのこの時期、中国で臓器移植手術が急増しており、移植を待つ期間は大抵1週間から2週間。値段は国際的な医療市場に較べてかなり安く、アメリカの10分の1以下であったという。同医師はこうも述べる。

「どうやら法輪功信者は数万人規模で捕らえられ、信仰を棄てることを強制されているようだ。そして逮捕されると、必ず血液検査を受けさせられる。(略)血液型は、臓器移植で必ず必要になる情報だ」(「王立医学協会ジャーナル」07年3月)

 また、06年9月29日の米下院公聴会で証言したカーク・アリソン博士によれば、99年からはじまった法輪功学習者に対する迫害は、「文化大革命以来、特定の団体を対象にしたもっとも深刻な人権侵害」である。

 国連報告によれば中国で行われている拷問被害のうち、66%を占めるのが法輪功信者に対する虐待だが、アリソン博士によれば、「イデオロギーを使って法輪功を撲滅させる組織的なプログラムがはじまったのとおなじ時期に、中国におけるあらゆる臓器の移植手術、ならびに海外から臓器移植のため訪れる渡航者が急増している。その結果、臓器の供給源に関する疑惑が持ち上がった」という。

 さらに同博士は「処刑と移植の連携に政府機関が関与しているのは明白」と説明する。

 この当時、レシピエント(患者)を募る中国国際臓器移植ネットワーク支援センターの海外向けウェブサイトには、「(臓器手術の)多くは中国政府の支援の下におこなわています」と、堂々と謳われており、さらに続けて「最高人民法院、最高人民検察院、公安部、司法部、衛生部、民政部が一体となって法律を制定し、政府の支援の下で臓器移植の手術を行えるようにしました。これは世界でも類を見ないことです」と、誇らしげに書かれていたのである。

 たしかに「世界で類を見ないこと」であったに違いない。なにしろ、〝異教徒〟は国家ぐるみで処刑して臓器を摘出し、それを輸出して外貨を稼いでいた、というのだから。こんな悪逆無道がつい最近までこの地球上で行われ、そして現在もまだ終わっていない可能性を考えると眩暈がしそうだ。

 立て続けに為された一連の告発を受け、ニューヨーク市立大の著名な生命倫理学者であるアーサー・カブラン博士は、次のように結論づけた。

「中国で起きていることは、決してただの臓器移植ではない。ある患者がある時にある臓器が必要な場合、たまたま処刑される死刑囚を頼みの綱にするのは、当然不十分だ。刑務所は目的を持って選んでいる。囚人の健康状態、血液型、細胞組織形態などを精査し、適する臓器提供者を見つけては、旅行者の滞在期間中に刑を執行する。これはすなわち、需要のために人を殺す、オンデマンド殺人だ」(『国家による臓器狩り』自由社)

 嫌疑不十分のまま逮捕された容疑者がろくに審理もなしに処刑され、後ほど真犯人が名乗り出たにもかかわらず裁判所が再審理を認めなかった例もある。

 05年、河北省で起こった連続強姦強殺事件の犯人が逮捕された。取り調べを受けたこの犯人は、94年に別の場所で起きた強姦強殺事件に関しても「自分がやった」と認めた。しかし、この事件については容疑をかけられた別の青年が逮捕され、翌年には死刑が執行されていた。つまり容疑者は冤罪で殺されたわけだが、真犯人が名乗り出たにもかかわらず、裁判所はこれを認めようとしなかったのである。

 昨年になって、この裁判所の不可解な態度を真相告発する内部文書がインターネット上にあらわれた。それによれば、先に囚われた容疑者が1年も経たないうちに処刑されたのは、この容疑者の腎臓が尿毒症に罹った党の高級幹部に適合したためであるという。このケースは法輪功とは関係ないが、事実が証明されれば明らかな「オンデマンド殺人」の証拠となる。

 1つの生命を救うために、別のもう1つの生命が犠牲を強いられる……。この「オンデマンド殺人」の恩恵を、じつは日本人も受けていた。

 04年と05年の2年間に、計108人の日本人が訪中して腎臓や肝臓の移植手術を受けていたことが、これを斡旋していた日本人コーディネーターの証言でわかった。この日本人によれば、日本国内ではドナーの数が少ないため、待ちきれないレシピエントが最大の臓器提供国である中国に渡航していたのだという。移植手術は北京、上海、瀋陽の有名病医院で施術され、費用はアメリカの10分の1以下で済んだ。

 では現時点で事態がどう変化したかといえば、別の関係者は「日本人を含め、中国で手術を受けるための移植ツアーは07、08年を最後に、現在おこなわれていない」と語る。中国内での規制が厳しくなったためだが、しかし「自分の知る限り、共産党幹部ら、中国の富裕層に対する移植手術は現在も闇で実施されているはず」と彼は言う。現在移植手術がおこなわれている唯一の病院が、天津第一病院だ。

 国際的な監視体制を

 02年5月、日本に帰化した新潟県在住の法輪功信者、金子容子さんが帰省中に北京で法輪功の普及活動をしたとして中国当局に拘束され、労働強化所で過酷な拷問を受けた事件があった。日本国民の生命が絶命の危機にさらされたというのに、国会はまったくと言っていいほど関心を示さなかった。

 このように、中国で20年以上にわたって続いている「臓器狩り」=オンデマンド殺人について黙殺を続けてきた日本の国会とマスメディアだが、地方レベルでは徐々にだが告発の動きが出てきた。

 たとえば青森県上北郡の六戸町では、一昨年町議会に提出された臓器移植に関する陳情書が昨年3月になって審議の末可決され、意見書として衆院議長、参院議長、内閣総理大臣、総務大臣など関係各相に送られた。その内容は直截的だ。

「中国での臓器移植手術数は1999年から飛躍的に増加しており、これは、法輪功信者に対する不法かつ残酷な迫害の開始と時期的に一致している。公的な臓器提供登録制度がなく、かつ死刑執行が減少する中で、拘束されている法輪功信者は、必要に応じてすぐに臓器を提供できる生きたドナーの供給源となったのである。/法輪功信者は拘束中、血液検査、尿検査、X線検査及び理学的検査を受けることになっている。(略)生きている法輪功信者からの臓器剥奪は、中国共産党の高官たちが共謀して行っている」

 六戸町の「違法な臓器生体移植を禁じることを求める意見書」はそう言って、日本国民が移植目的に中国へ渡航することを禁止する法律の制定などを求めた。これ以外にも、福岡市、岐阜市、船橋市などで同様の陳述書が議会に提出されているところだ。

 日本の中央政界で、唯一この問題に取り組んだのは、元衆議院議員で民主党の与党時代に拉致問題特別委員会委員長を務めたこともある中川博郷氏。金子容子さんの救出運動に関わったことがきっかけで中国の「臓器狩り」問題を知った中津川氏は2012年10月、議員会館に来日中のデービッド・マタス氏を招いて報告会を開いたが、周囲の反応は極めて鈍かったという。ちょうど解散直前というタイミングもあったが、国会議員の参加はゼロ。

 現在、参院選に向けて準備中の中津川氏はこう語る。

「日本の政治家は人権意識が低いのと、中国と波風立たせたくないのと、そしてこれをやっても票にならないというので、結局名前を出してこの問題に取り組んだ国会議員は私1人でした。しかし、臓器狩り問題はまだ解決していない。私が国政に返り咲いたら、まずこの臓器狩り問題を取り上げようと思っています。具体的には、議連を組む、委員会でどんどん質問する、趣意書を出すなどの方策を考えている。人権問題は何も共産党や公明党の専売特許ではない。これからは保守派が人権を語る時代だと思っています」

 周永康の逮捕により、国務院-公安系列の「臓器狩り」利権構造に楔が打たれたと言うが、人民解放軍の系列がどうなっているのかはまだ判然としない。国際的な議員連盟、そして国際的な医師連盟などが一致して運動を起こし、1日も早く厳重な監視体制を築き上げるべきだ。❏http://blog.livedoor.jp/nomuhat/archives/1050098017.html

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