文在寅新大統領当選。今回の敗北を韓国保守派は真剣に受け止めないといけない。

今回の敗北を韓国保守派は真剣に受け止めないといけない。北朝鮮の工作を批判するだけでは勝てない。

まず、韓国は民主化闘争の過程で、ナショナリズムを基本的に左派(そしてそれを利用しようとしている親北派)に握られた。彼らは、従来の韓国政府とそれを支持する民間保守反共派は、かって日本統治時代は日本に従属し、戦後はアメリカに頼ろうとする『事大主義者』(要するにその時々の強いものにつく)勢力であるというもので、同時に経済成長には熱心だがそれは大企業優位の、労働者や中小企業を無視し、グローバリズムに傾斜して自国の産業を顧みない、しかも企業主一族が富を独占し労働者を搾取している(その象徴がサムソン、今回の朴槿恵を追い落としたデモの中には、このウような大企業への怒りと、朴槿恵がその代弁者だという宣伝に載せられた一面があった)というものだった。

韓国左派は、真の愛国者はアメリカに抵抗し自立を目指し、また労働者と庶民の側に立つ我々である、同民族で、しかも少なくとも抗日戦争を行いアメリカとも戦った自立した北朝鮮を敵視する前に、韓国はまず米軍基地に反対し、自国の経済矛盾を解決せよとアピールした。かって廬武鉉当選に大きな効果があったのは、選挙戦中、米軍車両が二人の女子高生をひき殺してしまった事故(これは不幸で偶発的な事故だったが、左派はこれを全面的に反米・反保守運動に結び付けた)だった。李明博大統領当選直後に左派の行ったアピールは、狂牛病の恐れのあるアメリカ産牛肉輸入反対、食の安全を守れ、というテーマのロウソクデモだった。これも根拠はないデマに近いものだったのだが、グローバリズム反対運動的なムードを盛り上げ、李政権はアメリカ従属だというイメージを広めるのに役立った。

言いがかりの面は確かにあっても、このような説が一定の説得力を持ってしまったのは、韓国における反日教育が、戦前・戦中の日本統治を一面的に否定し、その時代に、韓国人自身も懸命に努力して近代化を成し遂げようとした面を正当に評価せず、「親日派」として切り捨ててしまったからである。まだしも盧泰愚時代、韓国人の多くが統治下の実態を認識していた時期まではよかったのだが、全くその経験のない若い世代は反日教育をそのまま信じ込む傾向が表れた。

同時に、韓国政府や保守派による反共産主義教育の弱点は、共産主義者、左派を単に北のスパイ、悪魔の様に教えるだけで、共産主義の理論的価値や、思想史上の意義を無視する傾向があった。それでは、実際に韓国に富の格差が生まれ、現実の矛盾から左派的な思想に共感を持つ若い世代からしたら、保守反共は単なる無知な古い右翼か、企業や政府の側にだけ立って労働者のことを顧みず、特に就職が難しかったり、大企業に勤められない限り先が見えない若い世代に目を向けない、既得権益の老人にしかみえなくなる。そして、そのような若者の不満に対し、保守派の老世代が、朝鮮戦争の体験や、貧しかった時代のことを強調し、豊かな時代に生きた若者は甘えているといわんばかりの発言(それ自体は正しいのだが)を行えば、ますまず若者は保守から離れていく。

北朝鮮の脅威に韓国の若者が無知だと決めつけるべきではない。彼らの不満は、北朝鮮の脅威を語ることで、自分たちが今置かれている韓国社会の矛盾をごまかそうとしている(様に彼らには見える)保守系言説への不満であるかもしれないのだ。それを左派・親北派が利用しているのは、また別次元の問題である。韓国の現在は、歴史を一面的にゆがめ、自国の正当な誇りを失わせた教育の結果であり、同時にまた、若い世代の社会的不安、貧困層や格差の問題を、かって高度経済成長が可能だった時代の価値観や、昔の貧しさに比べたら甘えているの一言で切り捨てた一部保守層の問題でもある。

そして、今韓国には北朝鮮からの脱北者は約3万人存在する。もちろん努力し立派に定着している人も多いが、かなりの部分が、資本主義になじめず、定着金という形の支援金を使い果たしてもなかなか就職できずにいる例もある。いまの韓国の経済力で、北朝鮮との統一をなし得るとは思えないという恐怖感は、目の前の脱北者の存在を知る人ほど苦悩する問題だ。若い世代にとって、統一はすでにある種悪夢であり、自分たちの生活がさらに貧しくなるのではないかという漠たる不安もある(朴槿恵はこのイメージを払しょくしようと「統一は大当たりだ」という趣旨の発言をしたが、それはほとんど効果をもたらさなかった)

以上の私の指摘には誤りも多いとは思うけれど、今回の文在寅の勝利を、単に北の陰謀や、反日・親北の論理だけで分析するのは問題があると思い、一言乱雑ですが書いておきました。韓国で起きているのはある意味世代間対立であり、それをもたらしたのは保守派にも責任があるように思えます。

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