【投稿】 「慰安婦問題」と今後の韓日関係 韓国大統領候補者の「認識」を問う (統一日報4月6日)

【投稿】 「慰安婦問題」と今後の韓日関係 韓国大統領候補者の「認識」を問う
朴容正(民団神奈川県川崎支部議長)

 5月9日に行われる韓国の第19代大統領選挙への出馬表明者のほとんどが、ソウルの日本大使館および釜山の日本総領事館前の公道に設置された「少女像」(正式名称は「平和の碑」)の撤去・移転反対と2015年12月28日の「慰安婦問題」韓日合意の破棄、白紙化による再交渉を主張している。有力政治家らのこうしたの主張は、慰安婦問題の早期解決と韓日関係の改善に資するものだろうか。被害当事者の人権を尊重するとともに、冷静に現実を直視した合理的な対応により、この問題をめぐる韓日両国国民間の認識ギャップを少しでも埋め、相互理解を促すべきではないかとの思いから、①「少女像」とウイーン条約②「20万人論」と歴史的事実③「12・28合意」と破棄論ーーについて、大統領候補者らの「認識」を問いたい。

□「少女像」とウイーン条約

日本政府が撤去を求めている少女像は、ソウルの日本大使館前のものと昨年末に新たに釜山の日本総領事館前に設置されたものの二つである。

日本大使館前の少女像は11年12月に設置された当時から、「外国公館の安寧と尊厳を守るウイーン条約に反する」として撤去を求められていたものだ。12・28合意に際して政府が「適切に解決するよう努力する」と約束していた。その撤去が行われていないのに加えて、新たに釜山にも設置されたのである。
外交に関するウイーン条約には韓国も参加しており、本来ならば12・28合意とは関係なく、撤去または移転されてしかるべきものだった。
朴喆熙ソウル大学国際大学院長は「在外公館の『安寧と威厳』を守るよう定めたウィーン条約を無視するこうした造形物の設置に国際社会は批判的だ。『世論が好意的なら国際条約も無視できる』という主張は、私たちの間でしか通用しない」と指摘している(17年1月13日付「朝鮮日報」日本語版)。
日本は駐韓公館前の2体について、その撤去を求めているのに、韓国の一部政治家、市民団体、メディアは、知ってか知らずか、あたかも全国各地にある少女像(65体)の「すべての撤去」を要求しているかのように伝え、「少女像を守らなけければならない」などと強調、国民世論を誤導している。「日本による内政干渉だ」と断じる政治家らもいる。
国際法に基づいた当事国の要請を拒否して少女像を撤去しないことが韓国のイメージダウンではなくイメージアップになると考えているのだろうか。このような事実について世界の人々が正確に知るならば、日本社会はもとより国際社会において、韓国はどれほどの理解と共感・支持を得られるだろうか。
国家元首でもある大統領にならんとする政治家に聞きたい。例えばソウルの中国大使館の前に、民間団体が6・25韓国戦争時に南侵した北韓支援のために軍事介入したことに伴う同胞犠牲者の激増と南北分断の固定化招来を批判、南北離散家族の再会と民主平和統一の早期実現を願う造形物を設置した場合。中国がその撤去を強く求めても、「設置には正当な理由がある」「内政干渉だ」などとして、中国政府を非難し、国民に死守を呼びかけ、さらに済州道の中国総領事館前に同様な造形物の設置をも積極的に支持するのだろうか。ちなみに、中国は軍事介入後、北韓軍を指揮下に置き戦争を遂行した。だが、韓国および韓国国民に対して一度も謝罪していない。

□「20万人論」と歴史的事実

韓日両国のいずれにも韓国人「慰安婦」の人数を示す公的記録はない。そうした中で、韓国ではいまだに「20万人」という数字が、あたかも歴史的事実であるかのように喧伝され、若者を中心に多くの国民がそれを信じている。

昨年2月に公開され、観客動員数358万人を記録するなど、大ヒットした映画『鬼郷』(日本軍による少女たちの強制連行、性暴力、集団虐殺、「独立軍」による解放などからなる)は、冒頭、スクリーンの中央に、この映画は「実話をもとに作られた」と字幕が表示される。そして強制連行のシ-ンから始まる。
宣伝ビラ(●添付)では「なにが少女たちを地獄に送ったのか/20万人の少女たちが連行され、238人だけが戻った/そして今、46人だけが残っている」と強調している。
では、未帰還の同胞女性19万9千人(20万人-238人)はどうなったのか。映画は、日本軍による集団虐殺の場面を何度も登場させ、大虐殺を連想させる。そのような「大虐殺」が事実ならば、当然、韓国国内において、その実態究明とあわせて日本政府に対する責任追及があってしかるべきだ。韓国政府樹立以後、この間、政府はもとより、政治家や慰安婦問題追及運動団体からの問題提起すらなかったのはなぜなのか。理解しがたいことだ。
元慰安婦の支援運動団体である韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)はこの映画製作の支援者であり、「(日本大使館前の)少女像は不可避だ」と主張する朴元淳ソウル市長は、政治家の中で誰よりも先に同映画上映への支持を明らかにした。
機会があって昨年末に訪れた独立記念館(忠清南道天安市)でも、少女たちが日本軍のトラックに強制的に乗せられていく様子を示したジオラマを前に、解説員が「20万人以上の少女たちが慰安婦として連行された」と説明していた。韓国各地や諸外国に設置された「少女像」や記念碑の中には「20万人」の記述があるものもあるという。

日本の歴史家、近現代史研究者は右派・左派を問わず「20万人説」を否定している。従軍慰安婦問題研究の第一人者である吉見義明・中央大学教授は韓国人を含む全慰安婦数を5万人以上と推算している。同時に、吉見教授は、日本側の文書資料によっては「官憲による奴隷狩りのような連行が朝鮮、台湾であったことは、確認されていない」と述べている。

「朝鮮人強制連行」の歴史を追いかけて20年以上になる外村大・東京大学教授は、官憲を直接出動させて暴力的に連行していく方法については「朝鮮統治への影響や要員確保のコストを考えると、あったとしても例外的。日本人の役人が直接手を下さなくても、現地職員や地域の有力者、業者が動いて動員できた」とみている。
「慰安婦と戦場の性」などの著書のある秦郁彦氏は全慰安婦数を2万人前後と推算。そのうち最も多数を占めるのは日本人で約8千人、朝鮮人はその半数の約4千人、中国人とその他が約8千人としている。 
吉見教授らが責任編集したブックレット「Q&A『慰安婦』・強制・性奴隷 あなたの疑問に答えます」は「23の問い」について解説しているが、「20万人連行および大虐殺」についての言及はない。「戦後、女性たちはどうなったの?」(Q6)の項で「このように、日本軍は、日本人『慰安婦』を帰国させましたが、自ら立案・実行した『慰安婦』制度により植民地から戦地・占領地に連れて行った朝鮮人元『慰安婦』を帰国させる手だてをとりませんでした。日本軍・日本政府の戦後責任、植民地責任の放棄は、敗戦直後の置き去りからはじまります」と解説。置き去りされた人数には触れていない。

韓国では、今日なお女子勤労挺身隊と軍慰安婦の混同があるが、8・15解放(1945年)前の朝鮮での挺身隊の人数について、「植民地朝鮮の日本人」などの著者、高崎宗司・津田塾大名誉教授は、日本に動員された総数は多くても4千人と推定し、挺身隊が約20万人いたという説は「とうてい成り立たない」としている。外村大・東京大学教授は「若い女性が朝鮮だけで20万人も一度に動員されたら、社会に相当大きな影響を与えたはず。そんなに多くなかったのでは」と語っている(「朝日新聞」16年3月18日付「慰安婦問題を考える」)。

ちなみに、植民地時代の朝鮮人の人口は1940年で2295万人とされる(水野直樹「日本の植民地支配ー肯定・賛美論を検証する」)。「20万人」は同世代(10代半ばから20代初め)の女性人口の約30%に当たる。韓国の中で既定の「事実」であるかのように喧伝されている「慰安婦20万人論」からすると同世代の女性の少なくとも4人に1人は慰安婦として強制連行され、しかもそのほとんどが韓国には戻れなかったことになる。

常識的に考えるならば、ありえにない数字(20万人および大虐殺)が、韓国社会ではいまだに否定、訂正されることなく、市民運動団体などによって喧伝され流通している。しかも、それに対して韓国の近現代史学者らは、積極的に否定せず、政府も傍観しているかに見える。

政府はもとより、正確な事実、正しい情報を、広く国民に伝える役割を担う主要メディアにも大きな責任がある。慰安婦問題と韓日関係について韓国側にも多くの不正確な理解があるのに、メディアはそれをきちんと正すことなく、なかば放置してきた。
過去の歴史および事実は正確かつ公正に認識され、語られなければならない。韓・日両国は隣国であるにもかかわらず、双方とも、一方の近・現代の歴史についてよく知らない。解放から72年。世代交代が進むほどに記憶はいやおうなしに風化していく。日本だけでなく韓国においても、確実な資料などによる歴史的事実に基づいた正しい歴史教育が求められる。

□「12・28合意」と破棄論

「12・28韓日合意」の破棄、白紙化による再交渉を主張する政治家や支援運動団体関係者は「事前に被害当事者との協議や同意がなかった」「日本の謝罪は心からのものではないし、当事者の意思を無視した」と批判している。

政府は、日本との交渉過程において当事者らとの意思疎通が十分ではなかったことや、合意後も反対者らへの説得努力が不足だったことについての批判は免れないだろう。だが、日本政府をして改めて謝罪させ、政府予算で事実上の賠償措置を実施させたことは、重要な前進であり、評価されてしかるべきではなかろうか。
「12・28合意」は、日本政府をして、▽「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、日本政府は責任を痛感している」と言わしめ、▽「安倍首相は、日本国の首相として、慰安婦としてあまたの苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からのおわびと反省の気持ちを表明する」と述べている(岸田文雄外相の記者発表)。
続けて日本政府は▽「韓国政府が元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府の予算で、資金を一括で拠出し、両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒しのための事業を行う」▽「これらの措置を着実に実施するとの前提で、今回の発表により、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」としている。

この「合意」に基づき韓国政府は昨年7月28日に「和解・癒し財団」を設立、9月には日本政府の拠出金10億円の受領を完了した。

昨年12月23日の「財団」の発表によると、合意時点で生存していた元慰安婦46人中、7割を超える34人が現金支給事業を受け入れる意思を明らかにした。公式に反対していたのは14人(「平和のウリチプ」の3人、「ナヌムの家」の10人、ほか1人)だった。彼女たちを除くほとんど全員が受け取り用意を表明したことになる。
さる2月13日に尹炳世外交部長官が明らかにしたところによると、34人に対する財団からの支給はほとんど終わっている。その中の5人は「合意」に反対する関連団体に所属し、団体が運営する施設に居住しているという。

ちなみに日本は河野洋平官房長官談話(93年8月)に基づき、村山富市内閣のもとで「道義的な責任」を認め、国民との協働による「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金)を設立(95年)。国民の募金による「償い金」とともに首相(橋本龍太郎首相から小泉純一郎首相までの自民党の歴代首相4人)自らが署名した丁寧かつ心のこもった「首相のおわびの手紙」を被害者たちに届ける事業を07年まで12年間続けた。この事実を知る韓国国民はほとんどいない。

当時、「被害者の尊厳の回復は、日本政府が法的責任を認め、国家補償によってなされなければならぬ」と挺対協が中心となり反対運動を展開。「受け取ったら被害者は志願していった公娼になる」とまで主張、「償い金」を受け取る当事者たちを、「非国民扱い」するなどした。そうした状況の中で、韓国政府が認定していた207人の被害者のうち、受け取ったのはその3分の1弱の60人にとどまった。

その一方で挺対協など韓国の支援運動団体は、少数の勇気ある被害者たちとともに、「慰安婦問題」の存在を世界に知らせるとともに、同問題を普遍的な女性の人権問題としクローズアップ。戦時性暴力を「人道に対する罪」として国際社会に認めさせるのに少なからぬ役割を果たした。

「12・28合意」は、「誠意ある真摯な謝罪」を求めてきた彼女たちの訴えを背にした韓国政府のねばり強い交渉の結果、日本政府をして「アジア女性基金」方式を超えた解決方式<日本政府の責任痛感、安倍首相の謝罪表明および国家予算からの事実上の賠償的措置>の実施を決断させたものと評価できる。
生存被害者の7割以上が「合意」を受け入れているにもかかわらず、いまだに「当事者の声を無視したものだ」として、「合意の白紙撤回」を主張しているは果たして妥当だろうか。
何をもって日本政府の「真の謝罪」かと最終的に解釈するのは各被害当事者である。「合意」に対する当事者それぞれの気持ちを大切にし、個々人の判断、自由な選択を尊重しなければならない。万一にも、「合意」受け入れを表明した当事者に対して、「基金」の時と同様なことが繰り返されることがあってはならない。それは、多くの被害当事者の意思を無視もしくは軽視するもので、それこそ心を踏みにじることにつながるのではないか。
支援運動団体の「合意廃棄」論は、大統領選挙後の新政権下での合意無効・再交渉推進を期待し強調しているのかもしれない。
しかし、日本での各種の世論調査などにも表れているように「12・28合意」を多くの日本国民が支持している。日本政府、安倍晋三首相をして白紙撤回・再交渉に応じさせるとの主張は非現実的だ。
日本政府は、65年の韓日基本条約と同時に結ばれた韓日請求権協定並びに経済協力協定によって法的な賠償の問題は個人の請求権も含めて「完全かつ最終的に解決」されているという立場を一貫してとっている。日本では慰安婦問題にかかわる訴訟はすべて被害者の敗訴に終わった。07年の最高裁判決で慰安婦問題を有罪にしないとの判例がでている。

韓・日両国内には、12・28合意は「最終解決」ではなく、それに向けての出発点だとして、合意の文書化や、心からの謝罪の気持ちを正式に伝える「安倍首相の手紙」を被害者に送ってほしいとの声もある。

それと関連して、安倍首相は国会答弁(昨年10月3日)で「毛頭考えていない」と強い表現で否定している。「合意」には「首相書簡送付」は含まれていないが、それにしても首を傾げざるを得ない答弁だった。
安倍首相は、10・28岸田外相記者会見をつうじて「心からのおわびと反省の気持ち」を表明している。だが、「合意」に対する「韓国内の反対世論」をも踏まえ、日本国家を代表する首相として、国会答弁の機会に、直接自らの言葉で被害当事者の心に届くような「誠意のこもった謝罪表明」を行うこともできたのに、非常に残念だった。
安倍政権に対する日本国民の支持率は依然高い。与党自民党の支持率も他の政党を圧倒している。仮に、韓国の次期政権が、白紙化を前提に再交渉を主張しても、安倍政権が応じる可能性は限りなく低い。ましてや歴代日本政府の基本的立場を変更して「法的責任/国家賠償」に応じることは考えられない。「アフター安倍政権」になれば、日本政府の基本的立場を180度転換させることができると考えているのだろうか。
平均90歳という被害者当事たちに残された時間はそう多くはない。昨年1年間で7人が亡くなり、今では39人となった。「合意」の白紙撤回・再交渉を主張している間にも、亡くなる人が増え、数年もたつとほとんどいなくなるだろう。時間との勝負であることを、知りながらも、問題の解決を際限なく先送りしてはならない。

万一、韓国の新政権が、韓日政府間合意を一方的に破棄するようなことになれば、慰安婦問題を永続化させるだけでなく、両国関係のさらなる悪化へと導きかねない。破棄論者には、①「100%満足の新たな合意」の獲得と韓日関係の修復に、どれだけの時間と労力をかける覚悟なのか②そして、そのような覚悟さえあれば、「双方の国民が同意する新たな合意」と両国関係の修復・発展が可能と考えているのか、ぜひ聞かせてほしい。

韓国側が、日本政府に何かを求めるにしても、日本の国民の多くがそれを理解、共感し、日本政府に対して応じるよう働きかけるような雰囲気づくりが伴わなければならない。ウイーン条約に抵触する日本公館前の少女像の移転を拒み、合意の白紙撤回を主張、しかも「少女20万人連行・大虐殺」論を正すことなく国内外に発信し続けるのは、逆効果だろう。
慰安婦被害者も国民の多くと同様に、「慰安婦問題」が韓日間の関係改善への大きな障害としていつまでも残ることを望んでいないだろう。当事者たちが生存中に、韓日双方が互いに歩み寄り、共同作業をつうじて相手側に対する誤った認識・イメージの修正に努め、政府間合意を、両国国民間の合意にまで拡大することが望まれる。
日本側には、合意の趣旨と精神を尊重し、首相をはじめ高位当局者や責任ある政治家らが、それに反する、あるいは反すると受け取られるような言動は一切しないようにすることが求められる。
次期大統領をめざす政治リーダーは、自由・民主主義、基本的人権、法の支配などの価値観を共有する韓日両国の協力の増進が、東北アジアの平和の鍵となることを深く理解すべきであり、目前の「国民世論」に迎合して過度に両国間の関係を傷つけることを慎むべきである。韓日間の認識の差異・ギャップを踏まえ、「慰安婦問題」を含め日本国家・社会・国民に対する正確な理解に努め、国益・国民益増進のために両国関係の改善・強化へ、冷静かつ賢明な判断とリーダーシップの発揮を望んでやまない。
http://news.onekoreanews.net/detail.php?number=82590&thread=01

重要な投稿として全文を紹介させてもらいました。もちろん、意見の違いは当然あります。しかし、ここ日本に住む在日韓国人から、このようなメッセージが発せられた意義は真に大きい。本国の意志をただ代弁するのは在外公民のあるべき姿ではなく、日本にいるからこそ見える視点をこうして投げかけることこそ真の愛国者。この言葉が韓国の次期大統領に届いてほしい!

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