トランプを支持した人々の声

トランプを支持した人々の声
ルポ トランプ王国 金成隆一著 岩波新書から

トランプを支持し、彼を大統領に押し上げた人々の声を最もよく伝えてくれるのが、この「ルポ トランプ王国」です。ここから、何人かのトランプ支持者の声を紹介します。朝日新聞の悪口をここまで言っている私がこんなことを言っても説得力ないかもしれませんが、朝日の記者である金成氏のこのルポは素晴らしい。政治的には反トランプであろう金成氏が、ここまで深くトランプ支持者の本音をルポし、かつ岩波書店から本書が出たこと、このことは私も正当に評価しようと思います。

本書から引用するトランプ支持者の声

「彼はポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)で批判されることを怖れていない。(中略)経営者として常に判断を迫られてきた。そんな経験が豊富な指導者がこの国には必要なのよ。」
「国境を守らないと国が崩壊するわよ。不法移民の流入を食い止めるべきよ。私たちは彼らにあまりにも多くの自由とお金を与えすぎた。福祉に依存するようになり、その重みでアメリカが沈みそうよ。(中略)彼らは一時的な困窮から脱出する方法としてではなくて、福祉に依存することをライフスタイルにしていて、生涯それで暮らしていくつもり。それは許されない。」(56歳女性)

「今の政治家は、みんな胡散臭い。(中略)でもトランプは全部本音だ。彼が言うことは、彼が本当に考えていることだ。時に言いすぎるけど、それも含めて憎めない。(中略)」(35歳男性、労働者)

「オバマ大統領にもヒラリーにも、『あなたに必要なことを、私はあなた以上に知っている』という姿勢を感じる。私はそれが大嫌いです。(中略)オバマケアには、6割が反対していました。それでも、これが正しい、と言って大統領府が押し付けてくる(中略)『政府のほうが物事を深く知っている』という姿勢に、私は社会主義や全体主義に通じるものを感じるのです。いまの民主党は左に傾きすぎている。リベラル勢力が民主党を乗っ取ってしまったのです」(48歳男性、労働組合員で長く民主党支持者だったが今回はトランプ支持に)

「特定業界の金で選挙を勝ち抜いた大統領では、結局は何も変えられない。製薬業界の巨額献金をもらう大統領の下で、薬の価格が下がるはずはない。(中略)今でもトランプの偏見や憎悪をあおる言動は好きじゃないが、彼にはビジネスの才覚がある。一回、アウトサイダーにやらせてみるのも悪くないと思った。」(49歳、プエルトリコ系男性)

「彼はオバマと正反対で下品な奴だ。でも、思っていることを正直に言う。これが魅力なんだ。もちろん、正直に言いすぎるから、海外との関係を壊してしまう心配もある。でもね、この地域のためにできることなんて、だれが大統領になってもほとんどない。だったら、トランプみたいな男に4年間限定でやらせてみるのもいいんじゃないかと。(中略)エリートが支配するワシントンを壊すには、そのぐらいの大バカ野郎が必要だ」(38歳労働者、オバマ支持者だったが今回はトランプに投票)

「みんなが怒っているのは、雇用の喪失が主な原因と思う。共和党も民主党もどっちもグローバル化への対応で失敗した。アメリカの勤労者を忘れたのよ。勤労者の声はあまりにも長く無視されてきた。サイレント・マジョリティなのです。」(46歳女性)

「なぜ、アメリカの奥万長者は、アメリカ人の業者を使わず、さらに安い不法移民を使うんだ。自分の財布のことばかり考え、地域のことなんてちっとも考えていない。ブッシュ家のような、共和党のエスタブリッシュメントも同罪だ。不法移民が増えても、銀行員などの高学歴エリートたちは仕事を奪われる心配がないだろうが、俺たちには深刻なんだ。私は、ここで生まれ育ったアメリカ人だ。私は稼いだ金はここで使う。(中略)金は地域に還元する。社会ってのはそんなもんだろ。でも不法移民はため込んで、南のほうに送金するばかりだ。」(56歳、建設作業員)

「社会福祉を当てにするのではなく、一人一人のアメリカ人が自分の金を自分で稼ぐようになればアメリカを再建できる。社会主義的な考え方を広める政治家は注意したほうがいい。それはアメリカではない。」(77歳男性)(以上、「ルポ トランプ王国」から引用)

本書の中で最も印象的なのは、弟も、また友人もドラッグ中毒で死んでいったある女性の語る内容。麻薬に若い白人がおぼれていく理由は、何よりも雇用がないこと、未来が描けないことの絶望であり、同時にメキシコ国境を通じた麻薬の流入だと説明したのち、それまでは、全く政治に興味のなかった彼女が、死んだ弟がトランプのファンだったことから、ボランティアとしてトランプの大統領選挙に関わっていく。電話をかけまくり、相手が投票行動を決めていないときはトランプの政策を必死で説明、「ただのボランテイアのあなたがここまで一生懸命支持するということは、何かトランプには魅力があるのでしょう」という声を引き出す。ひたすらまじめに働いても未来の見えなかった彼女が、これからは政治をもっと学ぼうと考える末尾には、トランプに投票した人々が、何を彼に賭けたのかが最もよく表れていました。

繰り返しますが、著者はトランプの姿勢にも政策にも批判的。しかし、同時に、トランプ支持者の声の中には、部分的な事実誤認や誇張はあっても、現代社会の矛盾がはっきり表れていることを感じさせる一冊です。

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