朴槿恵大統領罷免を受けて再掲載します 朴正煕大統領と福田恆存

<朴大統領罷免>革新系政権誕生か…大統領選が本格化
毎日新聞 3/10(金) 21:09配信

 ◇保守系与党に逆風

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が罷免され、5月9日の実施が有力視される大統領選が本格化する。朴氏を巡るスキャンダルで保守系の与党・自由韓国党(セヌリ党から改称)は厳しい逆風にさらされ、最新の世論調査では革新系の最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表が大きくリード。盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領以来、9年ぶりの革新系政権が誕生するか注目される。【岩佐淳士】

 世論調査会社「韓国ギャラップ」が10日に公表した世論調査によると、主な候補の支持率は文氏が32%。同じ「共に民主党」で2位の安熙正(アン・ヒジョン)忠清南道知事(17%)を大きく引き離している。

 自由韓国党が出馬を期待する黄教安(ファン・ギョアン)首相は第2野党「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)前共同代表と同率で9%。一方、過激な発言で「韓国のトランプ」とも言われる李在明(イ・ジェミョン)城南市長は8%にとどまっている。

 文氏は10日、朴氏の罷免を受け「偉大な国民の力で歴史は前進する」とコメント。朴氏への抗議運動の参加者らにアピールし、支持を拡大する狙いがある。革新色の強い文氏には党内でも反発がある。だが、2012年の前回大統領選で朴氏と接戦を繰り広げただけに知名度は高く、今回のような短期決戦では有利な状況だ。

 黄氏は「短い期間で大統領を選出しなければならない。一日も早く危機を克服し、国政が安定されなければならない」と語った。

 一方、保守系には潘基文(バン・キムン)前国連事務総長が2月に不出馬を表明後、有力候補が見当たらない。朴氏の事件の影響で自由韓国党に対する国民の不信は強く、保守系の政党が大連合を実現する見込みも現時点では薄い。政党支持率でも自由韓国党は国民の党と同率の11%と低迷しており、「共に民主党」の43%に水をあけられている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170310-00000130-mai-kr

これも数年前に「月刊日本」に書いた原稿です。朴槿恵大統領の罷免が昨日決定、やはり、父上の偉大な業績が、残念ながら今の韓国の政治史の中で充分に受け継がれていないことを想いつつ再掲載します。朴正煕大統領は、天国から今の韓国をどう思っているのでしょうか。

朴大統領と福田恆存

戦後日本最大の保守思想家の一人、福田恒存氏の評論集が麗澤大學出版会から発行されている。戦後進歩派陣営がほぼ崩壊し、同時に保守陣営も思想的には混迷状態にある中、福田氏の著書が再読される事は大変意義深い。そして、福田氏は戦後韓国史上最も偉大な大統領、朴正煕大統領と深い親交を暖めていた。福田恒存氏の朴大統領追悼文「孤獨の人 朴正煕」(福田恒存評論集第十巻収録)には、二人の交友が美しく描かれている。

当時朴大統領を「軍事独裁政権」の一言で片付け、反対する金大中、金泳三の主張を「民主化要求の声」として深い分析もせずに全ての韓国民衆の声であるかのように取り上げてきた日本マスコミの論調の浅はかさを、福田氏が当時から完全に喝破していたこと、そして単なる人間的共感や反共産主義としての連帯に留まらず、朴大統領の政策を正当に評価していた事に驚かされる。

「十八年前の一九六一年五月一六日,朴正煕少将が軍事革命を起こしたのは何故か、その前の李承晩、尹晋善両大統領時代、国情騒然として民生安定せず、政財界が如何に腐敗していたか、そして朴政権のもとにおいて韓国の近代化が如何に目ざましくその実を遂げたか、日本の新聞は一度もその事実を伝えない。」(孤獨の人 以下同、尚原文は旧かな)福田氏は金大中事件に対しても、KCIAの暴挙を是認するわけにはいかぬとしながらも、元々日本国が反朴政権運動を展開中の金大中の不法入国を認め「友好国の正当政権打倒の意図を持った者に、日本における行動の自由を許してよいというなら、それこそ韓国の主権無視の表明」であったことを厳しく指摘している。なるほどKCIAによる金大中拉致事件は日本の主権侵害であるが、それ以前に、金大中氏が日本で親北勢力や朝鮮総連と連携しての朴政権打倒運動を展開する事を日本政府が黙認したならば、それは北朝鮮全体主義体制に間接的に手を貸す事に他ならない事のはずだ。

福田氏は朴大統領の精神を儒教道徳と近代合理主義の結合に見た。そして「そういう大統領のもとで、韓国は初めて四民平等の近代国家になったという事実である。(中略)朴大統領は維新革命後、何よりも外国とヤンバンの勢力を後楯にして自分の地歩を固めようとする連中を嫌い、これを政治の中心から排除しようとしたのである。民衆が慈父のように大統領を慕ったのは当然であろう。」逆に、ヤンバン的な知識人の特権意識に縛られた人々、特に北朝鮮の体制や共産主義に好意的な「進歩派・左派知識人」(日韓いずれを問わず)が朴大統領に憎悪の批判を浴びせたのである。これは日韓両国国民の多数派では決してなかったにもかかわらず、彼等の声はマスコミを通じて拡大化されていった。

当時のカーター大統領の在韓米軍撤退政策や、韓国に対する「人権外交」を、北朝鮮の正体も驚異も知らない政策として福田氏は苛立ちを隠せない。福田氏の次の言葉は予言的でさえある。「アメリカも、そして日本も、次の重要な事実を理解していない。それは朝鮮戦争を経験していない世代が二十代後半にさしかかっ

ているということだ。彼らには北の脅威と言うものが全く理解できない、したがって、そのためには消費生活や言論の自由に限界があることに想い至ら」ない。そして、韓国内の反体制運動は朴大統領を失ってむしろ進退に窮している。「安心して無責任な反体制運動が出来なくなるからだ。一度突進し始めたら、それを止めてくれる厚い壁が今やなくなり、北鮮にまで突っ走ってしまわなければ納りが附かないことになろう。」ここ十年間、韓国は危うくこの預言が実現する所だった。

福田氏は朴大統領と、韓国はアジアでは全体主義体制(北朝鮮、中国、ソ連)に直面する自由陣営の最前線基地であり、その苦悩を日米両国とも全く理解していない、と語り合った。朴大統領は「五年か七年したら、日本と韓国は、安全保障条約が結べる時が来る(中略)両国が手を結んでアメリカを牽き付けておかなければなりません。一つ一つがばらばらでアメリカと繋がっているだけでは危ない」と述べた。これは現在も、日韓の心ある政治家も国民も真摯に取り組まなければ行けない課題だ。

現在、北朝鮮は今も全体主義体制のままであり、プーチンのロシアは強権体制と大国主義を強め、中国も共産党一党独裁と人権抑圧体制は継続している。チベットへの抑圧や、また脱北者への無慈悲な取り扱いを見れば、およそ自由と民主主義という価値を共有する日韓と、この3国は相容れないことは明らかである。

朴大統領の人間性についても、福田氏は心温まるエピソードを紹介している。儒教道徳を朴大統領は愛し実践していたが、儒教の一部にある女性蔑視とは全く無縁だった。朴大統領に先んじて暗殺された婦人を、大統領は常に「あなた」と呼び、また妻も同じように語りかけていた。そして、この婦人の命を奪ったのは、言うまでもなく、北朝鮮と朝鮮総連の工作・洗脳で朴大統領暗殺を企てた在日韓国人文世光の銃弾だった。

銃弾が妻の命を奪ったとき、朴大統領は公的な場では最後まで冷静にふるまい、子供たちにも、絶対に取り乱してはならないと強く命じていた。国家の主権と国民の生命を預かる大統領が、このようなときに取り乱すのは許されない。しかし、夜半、すべての公務を終えたのちに、大統領は慟哭したという。私は朴槿恵大統領を弁護するつもりはないけれども、彼女は母を殺され、また、その父をも暗殺されている。そして母が殺されたときに、日本では、まるでこれが朴正煕の悪政のせいであるかのような記事や発言があったことは私たちが忘れてよいことではない。

朴大統領の再評価は、韓国では趙甲済氏によって最も体系的になされている。しかし、当時日本では軍事独裁、時にはファシスト呼ばわりされていた朴大統領の功績と人間性を、ここまで深く理解し、かつ誤解や批判を恐れずマスコミで発言していた日本の思想家がいたことは、知識人と優れた政治家の最良の出会いを示している。

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