書評 日本統治時代を肯定的に評価する

以下は、雑誌「正論」に以前掲載された文章です。大変良著で(決して一方的な日本賛美ではない)さらに広く読んで頂きたいので再掲載します

書評「日本統治時代を肯定的に評価する」(草思社) 

 本書は1926年に生まれ、10代の青春期を実際の日本統治下で過ごした朴賛雄氏の、実体験に基づく、朝鮮半島が「日本国」だった時代への追憶と評価である。著者は日本統治が、結果として李朝時代の封建制度を打破し、民衆を解放し、かつ近代化を成し遂げたことを正当に評価しているが、本書の魅力はそのような事実関係の証明だけではない。 

 まず、当時を評価する著者の視点は、常に非政治的な朝鮮庶民達の立場におかれ、決して日本に媚びたものにはなっていない。著者は、人間にとっての幸福とは、基本的人権と一定の生活水準が満たされていることだという現実的な視点にたち、それがある程度実現していたからこそ、統治時代には目立った反日独立運動が民衆の中には生まれなかったとする。これは決して現状追認ではなく、民族主義や統一幻想にしばしば取り付かれ、現実政治を無視し、時には北朝鮮の独裁政権にすら民族主義の立場から宥和的になる悪しき韓国知識人への原則的な批判になっている。著者が、老いたりといえども北朝鮮民衆の解放のためならいつでも戦う意志がある、とはっきり語っているのは、そのような庶民が北朝鮮独裁政権に殺され続けていることを許せないとする真の愛国者の声なのだ。

 本書のもう一つの魅力は、統治時代の日本人と朝鮮人との交流が生き生きと描かれているところにある。特に、学校における恩師と著者の、最晩年にいたるまで綴られた手紙に宿る精神の気高さはとても引用では伝わらないので、ぜひ本書を読んでいただきたい。このような師弟関係は、私見では朝鮮半島の儒教道徳と、近代日本のヒューマニズムとの出会いから生まれた、精神の歴史遺産というべきものだ。「正直に真実を明かそうとする努力は最も高貴なものだと私は考えます。そして私が幼少の頃、そのような良心と勇気をあわせ持った朝岡先生に教えを受けたことを感謝します」著者のこの言葉に漲っているのは、この交流を、現実を知らない世代の反日史観で汚されるのは、何よりも恩師と、あの時代を懸命に生き近代化の基礎を作った人々への侮辱だという歴史の証言者の信念である。本書後半部での、日本への協力を「親日派」と糾弾された朝鮮文化人への断固たる弁護論は、勇気ある選択を貫いて時代を生き抜いた人々への激しくかつ哀しい鎮魂歌のように響く。

 そして、本書で最も強い印象を残す人物の一人は、独立運動家呂運亨(著者の母の従兄に当たる)だ。彼は他の観念論的な独立派ではなく、朝鮮の現実を知った上で、日本との対話も行い、感動的な演説を残し、それは本書にも収録されている(日本側にもそれに応じる度量があった)。戦後すぐ同じ朝鮮人の凶弾に倒れるまで真摯に独立と日本との融和の道を求め続けた。著者は、このような人物にこそ、戦後朝鮮半島の未来を託したかったのだろう。

 

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