野坂昭如さん死去 『戦後の繁栄』を拒絶し『焼け跡』の日本にこだわり続けた人でした

直木賞作家の野坂昭如さん死去 85歳

 「火垂(ほた)るの墓」や「アメリカひじき」などの小説、「四畳半襖(ふすま)の下張」裁判やヒット曲「黒の舟唄」などで知られる黒めがねがトレードマークの作家、野坂昭如(のさか・あきゆき)さんが9日午後10時半ごろ、誤嚥(ごえん)性肺炎からくる心不全のため東京都内の病院で死去した。85歳だった。葬儀は19日午前11時から東京都港区南青山2の33の20の青山葬儀所で。喪主は妻暘子(ようこ)さん。

神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大文学部仏文科中退。63年、作詞した「おもちゃのチャチャチャ」が、レコード大賞童謡賞を受賞。68年に、敗戦と占領から日米親善という時代を生きる男の米国に対する屈折した心理を描く「アメリカひじき」と、終戦直後に栄養失調で亡くなった義妹をモデルに兄の記憶をつづりアニメ化もされた「火垂るの墓」で直木賞を受賞した。

 「焼け跡闇市派」を名乗り、歌手としてもデビュー、映画への出演やキックボクシングに挑戦するなど多彩な活動で話題を呼んだ。72年、雑誌「面白半分」の編集長だった時、永井荷風作とされる「四畳半襖の下張」を同誌に掲載、73年2月、わいせつ文書販売の罪で起訴され、80年に有罪が確定する。

 74年に参院選に立候補して落選。83年に参院比例代表区で当選するが、同年に辞職し、田中角栄元首相の衆院旧新潟3区から立候補。金権政治の打破を訴えたが、次点で落選した。

 97年に「同心円」で吉川英治文学賞、02年に「文壇」とそれまでの業績により、泉鏡花文学賞を受賞。戦争を忘れてはいけないという思いから、「戦争童話集」の作成に取り組んだ。

 「ソ、ソ、ソクラテスかプラトンか」で人気を呼んだテレビCMや討論番組でもおなじみだった。03年に脳梗塞(こうそく)で倒れ、リハビリを続けていた。

http://digital.asahi.com/articles/ASHDB3DK3HDBUCLV00H.html

野坂昭如と言えば、私にとってはまず「骨餓身峠死人蔓」と「童女入水」ですね。特に後者は、幼児虐待というもっとも現代的なテーマを先取りしていた。あとこれも最近亡くなった水木しげるが漫画にもした「マッチ売りの少女」の、残酷さと抒情性の見事に一致した世界、そしてその抒情面をさらにきわだたせた「戦争童話集」の、アンデルセンかと思わせる美しい世界。やっぱ、今も読みなおすべき人だと思う。あと小説としての完成度はいまいちかもしれないけど「てろてろ」のアナーキーさはどっか赤塚不二夫に通じるものを感じる。

以上まあ私の趣味がかなり入っていて、たぶん小説としての評価は「アメリカひじき」「火垂るの墓」「エロ事師」あたりとなるのでしょうね。しかし近所の書店に行ったんだけど、文庫本コーナーには野坂さんの本ほとんどなかった。スペースの関係とか、難しいのはよくわかっているんですけど、少しは置いておくべき人なんだけどなあ。

野坂さんは基本的に、戦後という時代にどこか強烈な拒絶感、反発を感じていた人だったと思います。もちろん、戦後民主主義の重要性はよくわかっていたし、そういう発言もずいぶんしている。ただその小説を読む限り、焼け跡闇市の時代の、貧しさとアナーキーな世界こそが本物で、経済的繁栄を迎えたその後の時代にずっと違和感を持っていたし、それがよく作品に現れている。骨餓身峠死人蔓の、滅びゆく炭鉱とそこでの近親相姦、死人の栄養を吸って育つ蔓の織り成すイメージは、個人的には中上健次が描こうとしていた世界の先取りとも思わせる。そして、最後にダムを作って「経済的繁栄」をめざそうとするとき死者が幽霊のように現れる様は、野坂の戦後への敵意と怨念の象徴かと思えました。

野坂さんが全共闘運動に一時シンパシーを抱いたのは、戦後の繁栄の中で育ったはずの学生の中から、戦後を拒否する運動が表れたことにある驚きと共感を覚えたんだと思う。ただ、それはやはり擦れ違いにおわった。本気で無頼を語る人ってたいがいそうなんだけど、野坂さんも古典的なモラリストの面があって、すごく「反動的」な発言も行っている。瀬戸内寂聴との対談とかではそれが典型的に表れていて、「きけわだつみのこえ」を政治的に批判する学生に対し、そういう単純な読み方しかできない人間は、いつか逆方向の軍国主義にいきつくと言い切っていたのは今読むとさすがだと思います。

それと「パフォーマンス」なんて言葉のまだなかった時代、まさにパフォーマーとしてもこの人は一流だった。笹川良一の日本船舶振興会のコマーシャルをパロったのはお見事。

後、この歌は今聴くとちょっとすごい。

「マリリン・モンロー・ノー・リターン」「終末のタンゴ」共に名曲!「黒の舟歌」の叙情よりも、こちらの方に野坂さんの本質が表れている。

これはクレイジー・ケン・バンドのライブから。CD化された「 クレイジーケンバンド 『CKBライヴ 青山246深夜族の夜」は、このバンドの最高傑作じゃないかとすら思う。そして、2000年の段階での野坂さんの声、実に若い!.

You can leave a response, or trackback from your own site.

Leave a Reply

Subscribe to RSS Feed