「帝国の慰安婦」著者朴裕河氏がソウル地検により在宅起訴。良心的知識人への弾圧は韓国の不名誉だ

「帝国の慰安婦」著者を在宅起訴…名誉毀損罪で

 【ソウル=宮崎健雄】ソウル東部地検は18日、学術書「帝国の慰安婦」の著者で世宗大の朴裕河教授(58)を、いわゆる従軍慰安婦だった女性の名誉を傷つけたとして、名誉毀損きそん罪で在宅起訴した。

 慰安婦をめぐる歴史研究が訴追対象となり、波紋を呼びそうだ。
 同地検や元慰安婦の女性が共同生活する「ナヌムの家」によると、2014年6月、元慰安婦の女性11人が、同書で「自発的な売春」「日本軍の同志であり協力者」のように描写されて名誉を毀損されたとして、同地検に告訴していた。
 同書は韓国で2013年に出版され、女性らはソウル東部地裁に損害賠償訴訟を起こしたほか、出版差し止めの仮処分も請求。同地裁は今年2月、34か所の削除をしなければ出版を認めないとする仮処分を出した。日本でも14年に出版された。
http://www.yomiuri.co.jp/world/20151119-OYT1T50065.html

これはいくらなんでも韓国よくない。「帝国の慰安婦」は私も二回読み返しました。異論はあるけれど、慰安婦問題を論ずる上で必読書の一つだと思う良書でした。韓国からこういう冷静で、かつ、あくまで韓国人としての立場をしっかり守り、資料を丁寧に読み込み、慰安婦の人たちにもきちんと直接取材した本が出たことに感動しましたよ。

私はいわゆる嫌韓派のようにみられているかもしれないけど、個人的には、韓国に対して私なりの共感も、何よりも北朝鮮に対峙してきた歴史に対する尊敬もあるつもりなんです。だからこそ、このような学者の業績をまるで韓国が「民族反逆者」のように扱っているように見えるのは残念に思う。

私は発売中の「夢・大アジア」第3号(集広舎)に、「帝国の慰安婦」の書評を掲載させていただいています。決して朴氏は日本に媚びている人ではない。慰安婦の人たちへの敬意も、愛情もきちんと持っている。日本に対して言うべきことは言っているけど、その前に、自国の問題点からも目をそらしてはいない。こういう人に対しては「良心的知識人」という言葉をためらいなく私は捧げたい。朴氏を起訴することは何よりも韓国の不名誉となる。

私の書いた書評の前半部分をここに置いておきます。こののち、私は朴氏の結論に対し批判的な意見を書いていますが、それはまた別。全文を読んでみたい方は「夢・大アジア」第3号を手に取ってみて下さい。

書評 帝国の慰安婦 朴裕河著 朝日新聞出版

三浦小太郎
 私は慰安婦問題を語るときに「彼女らはただの売春婦にすぎない」という言葉だけは使わないようにしている。もちろん、韓国や北朝鮮のプロパガンダである「慰安婦強制連行」なるものは認めない。植民地支配という点ではるかに残酷なことをしてきた欧米、今もチベットやウイグルなど諸民族を植民地支配している中国、日本人をシベリアに強制連行した旧ソ連に日本を批判する資格など全くないと思っている。しかし、同時に、平和な戦後に生まれ育った私が、戦前は日本国民として日本軍と共に厳しい戦地を体験し、戦後は韓国国民として様々な人生を生きてきた女性たちの人生に対して、一定の敬意は持ち続けたいと思う。

そして、この問題で何よりも問題なのは、慰安婦を「支援」すると称する人たちの側に、真の意味での彼女らへの敬意がほとんど感じられないことである。アメリカやソウルの日本大使館前に建てられた慰安婦像を見るたびに、一層その思いは募る。このような想いを、私は韓国の人にこそ語っていただきたいと思っていた。その意味で、2013年に出版された本書『帝国の慰安婦』はまさに日韓両国のために必要な本が出た思いである。

まず共感できるのは、著者の朴裕河ができる限り中立の立場に立って資料を緻密に読み込もうとしている点だ。まず、戦前の朝鮮半島においては、幼い少女がだまされて売りとばされるような事件は少なくなかったことを、戦前の新聞報道に基づいて指摘する。その上で、実際の元慰安婦証言を読み解く限り、「日本軍に強制連行」されたとしている人はごく少数であり、それらの証言も「業者が制服を着て現れ、軍人と勘違いされた可能性」が高いことを読み解いていく。「『強制連行』との言葉が、公権力による物理的力の行使を意味する限り、少なくとも朝鮮人慰安婦問題においては、軍の方針としては成立しない」(46頁)これを言いきることは、おそらく現在の韓国言論界ではかなりの勇気を必要とするはずだ。その上で、もし彼女らを甘言で騙して慰安婦にしたものがいたとすればそれは女衒や業者であり、法的責任を問うとすれば彼らに対してであること、しかも多くは朝鮮人自身だったことも指摘している。

そして「挺身隊」と「慰安婦」の混同についても、本書は最初の誤報を1970年のソウル新聞や、在日朝鮮人作家の文章にさかのぼってそのような記述を確認し、さらに業者自身が挺身隊と偽って慰安婦を集めた可能性も示唆していく。その上で「20万人の少女が慰安婦にされた」と言う言説がまかり通ったのはこの挺身隊との混同であること、そしてより重要なのは、慰安婦は「少女」ではなかったことを論証していく。

圧巻なのは、慰安婦像に対する根本的な批判である。慰安婦の平均年齢が資料から類推する限り25才であり、「少女」の像そのものがふさわしくないこと、裸足でこぶしを握り、日本大使館を真正面から見つめている姿は、実情とはかけ離れた「抵抗する慰安婦」であり、また実際に来ていたとは思えないチマチョゴリを着せた姿は、独立闘争で死んだユ・グアンスンの像に類似した「気高い独立闘士」に作られていることが指摘される。そして、この慰安婦像を巡る次の文章は私に最も共感できる一節だった。

「結果として、実際の朝鮮人慰安婦が、国家のための動員され、日本軍と共に戦争に勝つために日本軍の世話をしたことは隠蔽される。」「そこには、日本の服を着せられて日本名を名乗らされて『日本人』を代替した『朝鮮人慰安婦』はいない。日本軍兵士を愛し、結婚した女性も、そこでは居場所を与えられない。死に赴く日本軍を最後の民間人として見送り、日本軍を自分と同じ運命におちた気の毒な存在とみなして同情する『朝鮮人慰安婦』は、そこにはいないのである。(中略)『日本人より業者が憎い』とする慰安婦もそこには存在しえない。結果的にそこには『朝鮮人慰安婦』はいない。(155頁)

 この文章からわかるように、著者は慰安婦像をあくまで総合的に、かつ何よりも敬意と愛情をもって論じている。軍が慰安婦のための運動会を主宰し、彼女らが涙を浮かべつつ喜んでいた姿を引用し、もしも人権を語るのならば、このようなよき思い出を慰安婦たちに封じる権利は誰にもないという著者の指摘は絶対的に正しい。そしてこの姿勢は、ベトナム反戦運動の指導者であり、代表的な戦後民主主義の論客だった鶴見俊輔が、若い兵士が目前の死を覚悟した時、慰安婦の人に心から慰められるという瞬間は確かにあったとし「私はそれは愛だと思う。私はそのことを一歩も譲りたくない」と語った姿勢、そして慰安婦が参加した満州での運動会のエピソードを、見事な文学作品(「娘に語る祖国『満州駅伝』従軍慰安婦編」)に昇華させた在日韓国人劇作家、つかこうへいの姿勢とも共通するものがある。

著者は現在の日韓の慰安婦支援運動に対しても的確な批判を加えていくが、それもあくまで慰安婦当人の現実に寄り添うものではなく、何らかの政治的意図に基づくものや、実態とはかけ離れた像を慰安婦に押し付けるものが主流だったからである。慰安婦証言がしばしば矛盾したり、当初の聞き取りよりも過激で残酷なものに変わって行ったのも、彼女らの虚言や誇張と言うより、むしろ、そのような被害者としての証言だけを期待する聴衆や運動家に影響された結果ではないかという著者の指摘は、多くの人権運動や差別反対運動、マイノリテイへの支援運動がしばしば陥りがちな問題点をも普遍的に指摘していると言えるだろう。

また、国連におけるクマラスワミ報告についても、そこでは吉田清治証言と言う虚偽情報が引用され、また北朝鮮の慰安婦による信じがたい証言(13歳で慰安婦にされ、また酷い拷問を受けたなど)「20万人」の「少女」が慰安婦にされ殆どが殺害された(実際は著者も触れるように殆どの慰安婦は戦後帰国している)などの誇張が含まれていること、マクドウーガル報告にも同様の過ちがあることなども著者は批判的に分析している。また、韓国米軍基地における朝鮮戦争以来の慰安婦の問題、インドネシアのオランダ人女性の問題、また韓国自身のベトナム戦争における問題なども、本書は短いながら触れており、著者の視点の公正さをうかがわせる。余計なことながら、本書が「朝日新聞出版」から発行されたことも偶然とはいえ時代の変化を感じさせるものがある。(後略)

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3 Responses to “「帝国の慰安婦」著者朴裕河氏がソウル地検により在宅起訴。良心的知識人への弾圧は韓国の不名誉だ”

  1. サトぽん より:
    鶴見俊輔氏の話を検索していて、ここに至りました。氏の話として引かれている典拠は、「『期待と回想』下巻 鶴見俊輔、昌文社」ということでよろしいでしょうか。
  2. miura より:
    そうです。私は鶴見さんのいい読者ではないかもしれませんが、この回顧録は全編面白く素晴らしい本だと思いますよ。
  3. サトぽん より:
    いや、私が知りたかったのは、鶴見氏が書いている文章と、引用文の示す内容が微妙にずれている点です。そのため、確認させて頂きました。

    おそらく、この件については私のサイトで記事を書くと思いますので、その際はご連絡させて頂きます。ともあれ、早速の返答、ありがとうございました。

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