朝日新聞が事実上のプーチン支持記事(2012年3月初めのコラム)

これも同じ週刊誌コラムで、こちらは今年の3月初めに書いたもの。
朝日新聞が独裁者ともいわれるプーチンを支持したのは驚いた。

新聞不信 朝日新聞が事実上のプーチン支持記事

 3月3日朝日新聞一面記事「北方領土決着 プーチン氏意欲」には驚かされた。若宮啓文主筆の記事なのだが、「雪に覆われた林の中、別荘のようにたたずむモスクワ郊外の首相公邸」とポエムのごとくはじまるこの記事は、3月4日に行われる予定のロシア大統領選挙の結果を「勝利が確実とされる大統領選を目前にした1日」と、すでに次期大統領が決定したかのような書き方となっている。欧州各紙と若宮氏を前にしたこの記者会見で、ここまである特定候補を持ち上げるのはいかがなものか。

 もちろん、順当にいけばプーチン有利は動かない。しかし、これが他国の選挙だからまだよいが、仮に日本国の選挙でこのような事前報道をしたら完全に法律に触れる行為である。しかし、若宮氏はこの記事で、プーチンの再選、そしてその後の北方領土問題について、ほとんど当のプーチン氏以上に前のめりの記事に終始している。朝日新聞は、これまでプーチン氏の、若宮氏自身この記事で認めている「皇帝気取り」の独裁的手法を批判的に論じ、腐敗や独裁を批判するロシア民衆の声を好意的に伝えてきたではないか。北方領土さえ解決すれば、独裁体制は別にそのままでも構わないのだろうか。

 しかも、その北方領土問題についても、若宮氏の文章はピントはずれである。まず、プーチン氏が最近の外交論文で日本についてほとんど触れていないことを指摘した若宮氏は、「日本をお忘れか」と質問し、プーチン氏は「言下に否定」し、「大好きな柔道の話を持ち出し、日本のハイテク技術を讃えて経済関係に期待を語」り、「その進展が領土問題の最終的な解決に結びつくよう」「熱く語った」と、若宮氏自身の口調も熱いこと熱いこと。まるでプーチンとさしで交渉しているかの勢いである。

 しかし、これって簡単に言えば、日本との経済交流や開発支援は大歓迎であり、それが進展しなければ領土問題なんて解決しませんよという「初めに交流ありき」の、ロシア側が実利を取った上での領土問題交渉に移るという話にすぎないのではないか。日中の経済交流は多少やりすぎなほどのODAを基本に大いに進んでいるが、だからと言って尖閣諸島の問題が解決するわけではない。そして若宮氏も認めているように、プーチン氏の最大限の譲歩は「2島交渉」であり、全4島返還は考えていないことはここでの記者会見でも明らかだ。若宮氏は、領土問題の解決は秋まで『引き分け』がいいというプーチン氏に「2島では引き分けにならない」と「突っ込み」プーチン氏は「思わず笑って今後は交渉に『はじめ』の号令をかけよう」と語ったことを、若宮氏は「驚いた」と書き、メトヴェージエフ前大統領とは大違いだと感動しているが、交渉を始めましょうというだけでここまで感動してしまっては、逆に日本の甘さが付け込まれるだけである。北方領土はソ連の侵略であることが明確である以上、交渉がはじまるだけで喜ぶわけにはいくまい。

 さらに若宮氏は、日本側の「固有の領土」「不法占拠」といったこれまでの発言も、その意図を超えてロシア側を硬化させたとし、日ロの「ボタンのかけ直し」を提案する。しかし、ボタンはかけ直すときにまた間違ってかけ違えては同じことを繰り返す。北方領土への前向きに聞こえた発言を聴いただけで日本の大マスコミがプーチンを支持しているかごとき記事が掲載されれば、ロシアのさらなる民主化を求める声を上げている人々にはどう感じるか、「人権の朝日」としてはいかがお考えか。

 もう一つ、危険な隣国として北朝鮮が存在する。これについて読売新聞3月2日社説「ウラン濃縮停止を見極めたい」では、今回の米朝合意を一定評価しつつも、北朝鮮がウラン濃縮を確実に停止するか否かを危ぶんでいる。これまでの北朝鮮の行動を見れば、約束を反故に何度もしてきた経緯があり、今回の合意は「あくまで核活動の部分的な停止にすぎず、秘密の核施設で北朝鮮がウラン濃縮を続ける可能性は充分にある」と危惧している。実は、この主張はほぼ4大紙に共通するもので、合意をやや前向きに評価する朝日新聞も、米国の前のめりを危惧する産経新聞も、北朝鮮をさらに監視せよという点ではほぼ同じなのだ。

しかし、ここまで来て読売も社説の最後を、北朝鮮が「『革命の遺産』である核とミサイルにしがみつき、手放すはずがない。北朝鮮の根本的な脅威は減じておらず、警戒は怠れない」と結んでいるのだ。これって、要するに今回の米朝合意の是非を問わず、北朝鮮は核を持ち続け脅威となり続けるという結論である。これは確かにその通りだろうが、だったら社説表題は「北朝鮮の脅威は変わらない」であるべきだろう。実はこの認識も、朝日社説が「もしかしたら金日成の遺言で核を廃棄するかもしれない」と微かに期待を込めているだけで(では金正恩の実父金正日の先軍政治維持の命令はどうなるのか)他紙も同様である。各紙ともに原発事故や放射能の脅威には神経質なのだから、北朝鮮の核兵器の脅威が持続することにはもっと警告を初するべきではないだろうか。

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